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レーザー脱毛 女性のうぶげ
2012-07-01 UP! カテゴリー:レーザー脱毛, 診療だより
脱毛治療が進歩した現在でも脱毛が難しい毛が存在します。
産毛(うぶげ)と皮毛角(ひもうかく)が大きい毛です。
今回は産毛の脱毛治療について私なりの見解を述べます。
産毛の脱毛治療には高いエネルギー照射が必要です。
産毛は毛が細く、メラニン含有量が少ないからです。
そのため十分な熱エネルギーが毛の周囲に伝導しにくいのです。
毛疱組織の熱緩和時間が40~100msec と概算すると、脱毛レーザーの理想的な
パルス照射時間は10~50msec くらいとされています。
「スキルアップ皮膚レーザー治療」より引用
繰り返しますが、産毛治療にはは高い照射エネルギーが必要です。
問題はパルス照射時間です。
細い毛は標的の体積が小さいので、照射時間を短くして熱伝導による損傷範囲を小さくすべきとの意見もあります。
産毛治療で照射時間を短くして毛包周囲組織まで破壊できるか?
産毛治療で照射時間を長くして何か大きなトラブルが生じるのか?
どなたか教えて下さい。
Gentle LASE 脱毛レーザーでよく見られる産毛の剛毛化現象について。
Gentle LASE のパルス照射時間が3msec と短いこと、アレキサンドライトという波長の特性上
あまり高いエネルギーを照射できない(熱傷リスクのため)ことが致命的な原因なのでしょう。
つまり、低い照射エネルギーと短いパルス照射時間のため産毛の毛幹細胞を破壊することが
できず、中途半端な熱エネルギーで産毛を刺激してしまうことが剛毛化の要因と想像できます。
毛のStem cell(毛を作る細胞)は毛包の最外層にあるので脱毛治療にはある程度長い照射時間が
必要なのです(下の図を参照して下さい)。
Asclepion社 学術参考資料より
経験から産毛の脱毛治療では高い照射エネルギーと長いパルス照射時間が必要な
気がします。
アレキサンドライトレーザーであまりにも高いエネルギーを照射すると表皮が損傷します。
産毛脱毛はダイオードレーザー、Nd:YAG(ヤグ)による治療が理にかなっています。
現在、私は女性の口周りの産毛を主にヤグレーザーを用いて治療しています。
Nd:YAGはメラニンの吸収率が落ちますが、その表皮ダメージが少ないのです。
レーザー波長の一長一短を上手く利用するのでレーザー脱毛のコツなのでしょう。
よい条件を選択すればそれなりの反応がでます。
またレーザー脱毛は最短で脱毛するのがよいと悟りました。
不十分な熱エネルギー供給で脱毛治療をだらだらと繰り返すうちに軟毛化が進むと
ますますレーザーでの治療が難しくなるからです。エステでの脱毛がそうです。
最後に光脱毛について。
光脱毛では下の写真のような女性の口周りの産毛は絶対に抜けません。
RF(高周波)を併用しても同じ結果です。
光脱毛で口周りの産毛が一時的に減ることがあります。
産毛が抜けたのではなく皮膚より上に伸びている産毛が焦げたのにすぎません。
脱毛したのではなく、焦がしたのです。
理にかなったレーザー機種を用いて理にかなった脱毛治療を行う。
これが産毛脱毛のコツではないでしょうか。
参考文献
渡辺晋一. レーザー脱毛. Aesthetic Dermatology. 2003; 13