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腱膜性眼瞼下垂 【手術の手順について】
2009-06-22 UP! カテゴリー:眼瞼下垂, 診療だより
まぶた、開けにくくないですか?
ハードコンタクトレンズの影響か30歳代で当院を受診される腱膜性眼瞼下垂の人が増えています。
なかには20歳代の方もおられます。
腱膜性眼瞼下垂とはまぶたを挙げる挙筋腱膜と瞼板の結合が緩むことで生じる症状です。
いろいろな術式がありますが挙筋腱膜を瞼板としっかりと固定することが手術の基本です。
眼瞼下垂症の目安としてMRD (margin reflex distance)がよく用いられます。
これは 角膜反射(黒目の中心)と眼瞼縁の距離のことです。
正常ではこの距離は3.5~4.0mm程度です。軽度の眼瞼下垂では1.5mm前後、中程度では0.5mm前後、
重症では角膜反射が隠れるためマイナスの値となります。
その他に上眼瞼挙筋機能 LF(前頭筋をブロックした状態で上と下を見てもらい、この間の距離を測定します)、
挙筋腱膜の評価(睫毛の向き、重瞼の幅の左右差)を参考にします。
私が実際に行っている手術について供覧いたします。
52歳の女性です。
黒目にまぶたがかかっており、目が開けにくそうです。睫毛は下を向いています。
まぶたを挙げるのにおでこの筋肉(前頭筋)を用いるため眉毛は上がり、眉毛と上眼瞼の距離が伸びています。
眼窩脂肪も引き込まれるため眼窩が陥凹しています。
その他に下垂症でよく見られる慢性的な頭が重い、肩こりの症状を併発しています。
この方のMRD は右 1.0mm 左 0.5mm です。
睫毛から5~6mm上でデザインします。皮膚は5mmにしました。
手術の2時間前に麻酔テープをまぶたに貼ってきてもらい、麻酔の痛みを減らします。
皮膚、眼輪筋を切除した後に眼窩隔膜を切開します。眼窩隔膜を切らない術式もあります。
腱膜性眼瞼下垂症の人の挙筋腱膜はうすくなっていることが多いので切開した眼窩隔膜を
反転させて挙筋腱膜といっしょに前転させています。
眼窩隔膜と腱膜の翻転部にある下横走靭帯の内側と外側を切断します。
この操作を行わないと術後のツッパリ感の原因となることがあります。大切な操作です。
写真下の剪刃の先端が下横走靭帯を指しています。
挙筋腱膜を前転させ、眼窩脂肪をWhitnall靭帯まで剥離します。鑷子先端がWhitnall靭帯です。
(下の写真は他の患者さんのものを使用しています)
眼窩隔膜と挙筋腱膜を前転したところです。斜め外側に走行しているのが分かりますか?
6-0プロリンを用いて挙筋腱膜を瞼板に縫合固定します。3点で固定します。
挙筋腱膜のベクトル方向(やや外側です)に固定するのがポイントです。
中央で固定した後、座位になってもらい眼の開きに左右差がないかを確認します。
座位で確認することがとても大切です。手間がかかりますが必要不可欠な操作です。
手術が終わった直後の写真です。麻酔の影響で腫れていますが、眼がかなり開きました。
眼力が出ました! 最初の写真と見比べてください。
眉毛と上眼瞼の距離も縮まりました。機能を改善する手術ですが、整容的にも若々しくなることが多いですね。
また、この方は手術を受けて頭の重さが完全になくなり、肩こりは半分以下にまで減少しました。
このように頭痛、肩こりが改善される方が多いのも驚きです。
院長ブログに載ることを快く了解してくれた患者さま、ありがとうございます。
手術を受けた方の表情が明るくなり、やってよかったと言われる瞬間が最高です!
~
北澤 健 先生へ
私にこの素晴らしい術式をおしみなく教えて下さり、言葉では表現できないくらい感謝しています。
先生のように一例ずつ丁寧に魂を込めて執刀していきたいです。