診療だより
カテゴリー一覧
ADM(ルビーレーザー)
-
ADM (両側性遅発性太田母斑様色素斑)の正しい治療
2010-01-24 UP! カテゴリー:ADM(ルビーレーザー), 診療だより
ADM ( acquired dermal melanocytosis )
日本語では両側性遅発性太田母斑様色素斑、後天性真皮メラノサイトーシス
などと呼ばれています。
20歳ころから両頬、おでこ、目の下などに出現する褐色~灰色のシミです。
シミというよりアザが正確な表現です。
この疾患には反省すべき思い出があります。
私が虎の門病院で皮膚外科の修行をしていた時(2010年)のことです。
20代のきれいな女性が外来に初診で来られました。
主訴は両頬部のうすい灰色の色素斑です(記憶が少し不明瞭です)。
その頃の私はADMという疾患に対する知識がありませんでした。
若くして出現した肝斑かな~と思い、ビタミンCを処方しようとしたところ、
患者さんから
「これは両側性遅発性太田母斑様色素斑と思うのでレーザー治療して欲しい」
と言われました。
そんな病気があるんかいな~と訝しがりながらも、患者さんに言われるがまま
レーザー治療の予約を入れました。
虎の門の外来カンファレンスにて、この患者さんのスライド写真を見て、
大原國章先生はきっぱりと
「両側性遅発性太田母斑様色素斑」と診断されました。
私は患者さんから教えていただくという、全く不甲斐ない医師でした。
それにしても皮膚外科で日本一の手術を行いながら、シミ、アザ治療にまで
造詣の深い大原先生は本当に凄いお方だと、今さらながら感じ入ります。
その頃から10年がたちます。
そんな私も今ではADMも含めたアザ治療も精力的に行っています。
患者さんからブログ写真の協力が得られましたので、合併症を含めて供覧します。
62歳の女性です。
両側の頬部に左右対称性に存在する小さな斑状の褐色斑です。
色素斑の分布と融合傾向がないこと、さらには年齢から肝斑ではなくADMと診断しました。
褐色斑はややグレーに見える部位もありますね。毛細血管の拡張も目立ちます。
ADM以外にも頬部の外側には老人性色素斑も混在しているのが分かります。
この年代の女性はいくつもの異なる病態の色素斑を併発しているもです。
ダーモスコピー(10倍の拡大鏡)の写真です。
いつも思うのです。ADMも太田母斑のように真皮メラノサイトーシスが疾患の本態です。
それのなにどうして青色ではなく褐色のことが多いのでしょう?
太田母斑にくらべると、増加した真皮のメラノサイトが浅いのでしょうか?
いまだに答えが分かりません。誰か教えて下さい。
下の図はメラニンが局在する深さによってどのような色調に見えるかを示したものです。
メラニンが深くなるにつれて褐色→グレイ→青 に見えます。
「An Atlas of Surface Microscopy of Pigmented Skin Lesion」より引用
Qスイッチルビーレーザー照射、11日後です。照射部が脱色素斑となっています。
照射1ヶ月後です。炎症後色素沈着を併発しています。
薄くなったり、濃くなったりまったくせわしないですね。患者さんとの信頼関係が大切です。
照射6ヵ月後です。
合併症も治まり、かなりうすくなりました。
反対側の写真です。現時点での患者さんの満足度は80% くらいかな。
第250回 東海地方会(平成21年12月)でもADMの演題がありました。
その内容を下にまとめました。
●ADM治療は脱色素斑、炎症後色素沈着を生じやすい。
●IWP(照射直後の白色変化)が生じる最小出力での照射が望ましい。
●治療間隔は6ヶ月はあけたほうがよい。
●治療の平均回数は3~4回である。
1回の治療でここまで改善したらまずまずではないでしょうか。
それにしてもThe Ruby Z-1は凄いやつです。
参考文献
Aesthtetic Dermatology Vol.19. No 4 December 2009
「対称性真皮メラノーシスの臨床と発症病態」村上喜美子、溝口昌子