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しみ(ルビーレーザー)
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マスターたちとの日々 その4
2010-03-05 UP! カテゴリー:しみ(ルビーレーザー), 診療だより
葛西形成外科さん(大阪)を訪れる機会に恵まれました。
葛西健一郎先生は日本で有数のレーザーの大家です。
葛西先生のことを知ったのは書籍「皮膚科診療プラクティス 17 Rejuvenationの実際」文光堂が
きっかけです。この本は葛西先生がゲスト編集でした。
その頃はまだ勤務医でしたが美容皮膚科とはなんぞや、との問いかけに惹かれたのを覚えています。
続いて購入した「シミの治療」文光堂はさらに衝撃的でした。
シミとはなんぞや? 正しい治療とは何か?
葛西先生の長年にわたる経験に裏打ちされた理論に衝撃を受けたのを覚えています。
クリニックを臨時休診して葛西形成外科さんに行ってきました。
日常診療で疑問に思っていることはたくさんあります。
●Qスイッチレーザー後のテープは10日間がベストなのか?
●Qスイッチレーザー照射後の炎症後色素沈着、消退しないものもあるのか?
●Qスイッチレーザー照射後に残った老人性色素斑の再照射はいつが適切か?
●ADMの本当の最適照射モードは何なのか?
●Qスイッチレーザー、ルビーとYAGの使い分けはなにか?
●Qスイッチレーザー照射後のハイドロキノン軟膏の外用は本当に意味があるのか?
などなど。
全てに満足のいく答えを頂くことができました。
2日間でしたが間違いなく私のレーザー治療は深まりました。
左から山村先生、葛西先生、しんちゃん先生です。
葛西先生の外来、治療を見させてもらいました。
1歳児の顔半分に及ぶ先天性母斑のレーザー治療。
すごかったですよ。この治療をやりぬく葛西先生の覚悟を肌で感じました。
「オレにしかできないんだ」という熱いパッションがびんびん伝わってきました。
こちらの心も揺さぶられましたね。
この患者さんのためにQスイッチレーザーのハンドピースを特注であしらえる程です。
常人にはできませんよ。本気の覚悟です。
葛西先生はしみ・あざ治療で有名ですが、手術も素晴らしかったです。
この日は腋臭症の手術を見学しましたが、片側でわずか20分でした。
縫合のコツも興味深かったです。
ある意味、葛西先生は天才的な先生です。ちょっと真似はできませんね。
閑話休題。
私がレーザー治療のバイブルとしている「しみの治療」にサインを頂きました。
この本は最低でも20回は読まないとダメですよ。
内容の関係上、ブログでは書けないこともたくさんあります。
私が心に残った葛西先生語録を少しだけ書きますね。
「相関関係と因果関係の混同」
「real と illusion」
「迷ったら強く照射する!」
「赤みは2種類ある。紅斑症と毛細血管拡張症である。紅斑症には炎症が伴っている。」
●ハイドロキノン軟膏の外用で炎症後色素沈着が軽減したのではなく、外用に伴う遮光、患部の丁寧な手当てが
炎症後色素沈着を軽減させている可能性がある。相関関係と因果関係を混同してはいけない。
●Qスイッチレーザー、炭酸ガスレーザー、脱毛レーザーはreal な治療である。結果が写真で分かるから。
サーマクール、フラクセルレーザーはillusion(幻想的) な治療である。結果が写真に現われないから。
●炎症が原因の紅斑症(例えば酒さ)の治療は炎症を抑えること。
フラッシュランプ治療は炎症がない器質的疾患にのみ有効である。
これ以上書くと、レーザーメーカーからクレームがきそうなのでもう止めますね。
この治療がどうして効いたのか、または効かなかったのか?
臨床結果からフィードバックして理論を構築する。
レーザーメーカーの言うことを鵜呑みにしているような先生はちょっと反省したほうがよいですね。
当たり前ですがレーザーメーカーは一台でも多く売ることが最優先目的です。
この症例覚えていますか?
notoriousな某美容クリニックでレーザー照射を受けた患者さんです。
以前にもこのブログに登場しました。
今の私なら全て分かります。
このしみは炎症後色素沈着ではなく、照射の誤りである!!
このまだらな色調は照射パワーが不十分です。低すぎるのです。
またまだらになっているところを見ると、照射にムラがありかなり雑です。
ビームプロファイルが一定でなく、粗悪なレーザーで照射を受けている可能性があります。
レーザー治療もすべては理論なのです。
そのことを葛西先生から教えて頂きました。