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眼瞼下垂手術 -こんな手術に注意!-
2010-07-01 UP! カテゴリー:眼瞼下垂, 診療だより
なんですか、これは?
最初に見たとき、驚きました。 What is the red line ?
目を開けるとアイシャドーのように赤い線が目立ちます。
名古屋市でレーシックを売りにしている眼科クリニックで眼瞼下垂手術を受けたそうです。
下垂も改善されずに、赤い線だけが残り日常生活にも支障があると。
眼瞼下垂の傷は重瞼ラインとなります。目立つことは通常ありえません。
それにしてもひどい手術ですね。おそらく皮膚だけを切除して縫合しただけでしょう。
こんなまがい物の手術が眼瞼下垂症手術として横行しているのも事実なのです。
皮膚だけを切るにしても切除部位が上すぎます。右が12mm、左が14mmです。
左右差もあります。 左は末広がり、右は末しぼみとデザインも無茶苦茶ですね。
ミクシーで私のことを知ったとのこと。何とかしてくださいと。
何とかなりますかね?
リスクがあります。
前医で皮膚をかなり切除されています。今回の手術で皮膚を切除できる幅は限られています。
取りすぎは兎眼(目が閉じないこと)の原因となるからです。
瘢痕を切除して、創を重瞼ラインにするのがよいでしょう。
創の睫毛からの距離に左右差があるので、左側を2mm余分に切除します。
切開線をしっかりとした重瞼ラインにするため、挙筋腱膜を瞼板に固定して皮膚の折込を
作ります。
座位で左右差を確認します。
7-0ナイロン糸で細かく縫合します。この時点で左右差はありません。
術後1週間です。重瞼ラインができていません。大丈夫かな~。
術後1ヶ月です。
赤い線はすっきりとした重瞼ラインになっていますね。よかったです。
目も開けやすくなったと本人は満足です。
今回のブログはいろいろな意味でデリケートな問題を含んでいます。
「前医の治療にどうしても納得できないです。何であんな手術したんですか?
傷が残ることも手術前に全く聞いていませんよ。ブログで自分の顔を公表してかまいませんから事実を伝えてください。」
と本人の強い憤りもありました。
28歳の若い男性です。
あの赤い傷をつけたままずっと生活することを想像するだけで私も切なくなります。
正直、修正術を引き受けるのに随分と悩みました。
手術を決定するまで3回くらい時間をかけて話し合いました。
本人の決意がとても強いこと、私を信頼してくれることからGo サインをだしました。
開業医として日銭を追っている私にも医師としての矜持が少しは残っていたようです。
ヒポクラテス(医聖)の誓いを引用します。
自分の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。