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たかが粉瘤、されど粉瘤 Final Stage(追加修正版)
2010-12-02 UP! カテゴリー:粉瘤, 診療だより
日本全国から粉瘤の方がいらっしゃいます。
有難いことです。ベストをつくします。
45歳の女性の方です。後頚部(うなじ)の粉瘤手術を希望され、東京より来られました。
他院でメスで大きく切るしかないと言われたそうです。
うなじです。傷をなるべく残したくないですね。
4mmトレパンを用いて腫瘤のヘソをくり抜きます。
指で揉みだして内容物を摘出します。しっかりと出し切らないと粉瘤の袋が出ません。
周囲を眼窩剪刃で剥離すると袋が飛び出てきます。
袋は底まで完全に摘出しなくてはなりません。剪刃(右)の刃先が袋の底面です。
術後1週間です。わざわざ東京からガーゼ交換に来られました。
肉芽が盛り上がってきています。
最終的にはニキビ痕くらいの傷で落ち着きます。
どう考えても手術代よりも交通費のほうがかかりますよね。
なんとなく申し訳ない感じです。
今まで髪の毛で粉瘤を隠していたそうです。
これでボブアップの髪型ができるとすごく喜ばれていました。
術後のガーゼ交換について。
原則的には術後1週間後に1回のみ再診してもらいます。
術後に抗生剤、消毒は処方しません。必要ないからです。
消毒は絶対にさせません。
かぶれの原因になったり、創傷治癒を遅らせてしまう可能性があるからです。
手術の翌日から入浴して創部をお湯で洗ってもらっています。
夏は化膿しやすいので手術しないほうがよい?
冗談は止めて下さい。私は一年中手術しています。
術後に化膿させたことは一度もありません。
くりぬき法で本当に袋がすべて取れるのか?
術者の技量によります。
下の写真はこの方の病理組織検査です。底まで取れているのが分かります。
くりぬき法で行った粉瘤の病理組織所見をいくつか提示します。
すべての症例がくりぬき法で取れるわけではありません。
最近経験した興味深い症例を提示します。
京都から右臀部の粉瘤を主訴に患者さんが来られました。
触診で腫瘤が2つあるような感覚を受けました。
エコー検査でも腫瘤が2つに分かれているのが確認できます。
おそらくくりぬき法では取れないでしょう。
患者さんはくり抜き法を期待して来られましたが、納得してもらいメスで切開しました。
ひょうたんのような粉瘤ですね。これは珍しいです。
病理組織検査のルーペ像です。メスで摘出して正解でした。
39歳の女性です。背部の上方に点状の陥凹が見えますか?
粉瘤の所見です。ご自分でよく内容物を出していたそうです。
このような症例は注意が必要です。
炎症により袋が周囲組織と癒着している可能性があるからです。
エコー検査をしましたが腫瘍(粉瘤)の輪郭は不明瞭です。
このような症例でくりぬき法は不適です。
皮膚割線(シワの方向)に沿ってメスで切除します。
切除した検体の病理組織検査です。やっぱりね。袋が飛び散っています。
私はブログでくりぬき法を強調しすぎていたのかもしれません。いささか反省しています。
適切な診断を下して最適な手術法を選択する。これがプロの皮膚科医ではないでしょうか。
【大切なお知らせ】
化膿したことがある粉瘤はくりぬき法はできません。
粉瘤の袋が周囲組織と癒着してしまうからです。メスでの切除しかできません。
耳の粉瘤もくりぬき法は不適です。
また、現在粉瘤が化膿して赤く腫れている状態なら、お近くの皮膚科で切開排膿処置を
受けてください。その状態で当院を受診されても手術はできません。
地元の皮膚科で切開してもらい、化膿が落ち着いた後紹介状を持参して来院してください。