診療だより
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脂肪腫 突然のFinal stage
2011-02-03 UP! カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより
あまり時間がありません。
脂肪腫は今回のブログで一区切りさせてください。
手術の上手な先生はたくさんいますので、まずは地元の先生に相談を!
最後ですので、皮膚切開についての私の考えを述べます。
右背中の脂肪腫です。わりと大きいです。
まずは2cm の皮膚切開をデザインしました。
脂肪腫を小さな皮膚切開で摘出するには指での剥離が不可欠です。
メッチェン(医療用のハサミ)では脂肪腫の表層は剥離できても、側方~下床は
なかなか剥離できないのです。
図で示すとこのような感じです(下手くそな絵ですみません)。
人差し指で脂肪腫を周囲組織からぐりぐりと剥離します。
私のひとさし指の太さが2cm弱です。
この症例では剥離しても腫瘍が飛び出てこないため、切開を1cm 伸ばします。
やっと出ました。下は僧帽筋と癒着していました。
全摘した脂肪腫です。このように全体として弾力性が強くぷりぷりとした脂肪腫は2cmの
穴からはなかなか飛び出てくれません。切開の長さは脂肪腫の性質にもよりますね。
もう一例、提示します。右肩の脂肪腫です。
有名な女流作家さんです。わざわざ東京から来られました。
けっこう大きいですね。
サルサをたしなんでおり邪魔なようです。
2cmの切開で取れるかな~?
大作家の利き腕です。なるべく傷は小さくしたいですね。
ひとさし指でぐりぐりして飛び出させます。
どっどっと飛び出てきました。
下床は三角筋と癒着していますが取れそうです。
一塊として脂肪腫が取れました。完全に取りきれば再発はありません。
皮膚外科学会で形成外科の先生が筋鈎を2本用いて脂肪腫を剥離摘出する演題を聴きました。
指であれ筋鈎であれ鈍的な剥離が脂肪腫治療には重要だと思います。
鈍的剥離では脂肪腫が周囲組織ときれいな層ではがれます。出血もほとんど出ません。
きれいな層で剥がれる=腫瘍が完全摘出できている
皮膚外科学会を通じてよりよい手術を普及していきたいです。