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診療だより

皮膚腫瘍

  • 脂肪腫 TWINS

    2012-10-18 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    脂肪腫のブログは封印していましたが、患者さんから載せて欲しいと
    逆指名がありましたので筆を取りました。
     
    41歳の僧侶さん。右肩のしこりが主訴です。

     
     
    診察の実況中継
    私   「しかし、ずいぶんと育てましたね~」
    僧侶 「どんどん大きくなってきました。もう限界です。取って欲しいです。」
     
    私   「さすがにここまで大きくなると・・・。」
    僧侶 「何とかなりませんか?」
     
    私   「いや~、あんまり大きいのは大学病院とかで手術したほうがよくないですか?」
    僧侶 「ホームページでは大きな脂肪腫が取られていました。」
    私   「まあ、ホームページだと簡単そうに見えるんですよ。ウソは書いてないですけど。」
     
    僧侶 「ホームページを見てここのクリニックで取ってもらうと決めて来たんです。」
    私   「そんな、勝手に決めて来られても・・・。」
     
    僧侶 「・・・。」
     
    禅問答ならぬ、お互いの駆け引きが続きます(笑)。
     
     
    右肩の脂肪腫の皮膚エコー診断
    脂肪腫(白い固まり)の内部エコーは均一。臨床でも皮膚に凹凸はなく硬さも均一。
    以上の所見から脂肪肉腫は考えにくい。下床の三角筋との癒着も強くはない。

     
     
    とりあえず4cm 皮膚切開することにしました。ここから写真は横向きになります。

     
     
    指を上手く使い鈍的剥離で脂肪腫を出します。

     
     
    なんと脂肪腫が2つ。双子や!

     
     
    なんとか全摘しました。これだけの脂肪腫がこの切開線ならまずまずでしょうか。

     
     
    脂肪腫もこれだけ育つとそれをつつむ被膜も厚くなります。

     
     
    きっちりと全摘するのがプロの皮膚外科医です。

     
     
    皮下に血抜きのドレーンを留置。真皮縫合をきっちりと合わせてから皮膚縫合します。

     
     
    二つに大きく分かれた脂肪腫は珍しいです。 LIPOMA TWINS
     
    僧侶さんには随分と感謝されました。手術中は全てを忘れ無心で執刀します。
    まさに涅槃寂静の世界でございます。
     
     
    【追 記】 反省を込めて。
    病理組織標本を確認すると通常の脂肪腫よりも脂肪細胞の核がやや大きいのが気になりました。
    私が最も信用するA医科大学附属病院病理部 H先生に診断をお願いしました。
     
    脂肪腫(spindle cell lipoma)を疑うが脂肪肉腫(well diff. liposarcoma)を完全に否定でき
    ないとのことで免疫染色(CD34)を追加しました。CD34 にてspindle cell は強陽性であり
    脂肪腫(spindle cell/ pleomorphic lipoma)と診断。良性だが大きいので局所再発の可能性
    は完全には除外できないとのコメントでした。
     
    僧侶さんにはそのままを説明ました。
    一塊としてきれいに摘出しているので再発の可能性は少ないと考えますが最低1年間は通院する
    ように説明しました。完全に摘出した自信はあります。
     
    今回の症例から反省すべきことがあります。
    あまりにも大きな脂肪腫はやはり総合病院で造影MRI 検査を行い脂肪肉腫の鑑別をしてから執刀
    にあたるべきであり、個人クリニックでの手術は控えたほうがよいと痛感しました。

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