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粉瘤 カリフォルニアの風に吹かれて
2012-11-01 UP! カテゴリー:粉瘤, 診療だより
粉瘤はやり尽くした感があります。
患者さんは52歳の素敵なミセスです。カリフォルニアにお住まいです。
平成24年6月頃から右頬部の膨らみに気づきかれたそうです。
アメリカで3人のドクターの診察を受けられたそうです。
最初のドクターからは腫瘤をよくマッサージするよう指示、そして
次のドクターからは腫瘤を温めるように言われたそうです。
ちなみに診察したドクターは家庭医ではなく皮膚科医だったそうです。
ドクターによって色々な考えがあると思いますが、腫瘤は外科的に切除
するのが最も確実だと私は思います。
腫瘤が大きくなるので心配になり緊急帰国。
初診時の所見です。右鼻翼外側に人差し指頭大のしこり。
腫瘤の拡大写真です。内容物が青灰色に透けて見えます。
皮膚の血管拡張があり、病変の主座が真皮内であることが予測できます。
エコー所見です。黒く丸い塊が腫瘤です。底面後方エコーの増強、両外側陰影があり
粉瘤の所見です。下床に癒着(白くなっている部位)あり?
前医ではエコー検査をしてくれなかったと患者さんから言われることがあります。
エコー検査はあくまで診断の補助であり、診断は触診が最も重要です。
ではなぜ私がエコー検査にこだわるのか?
それは私が粉瘤の治療にくり抜き法を好んで用いるからです。
エコー検査で嚢腫壁に癒着がある場合はくり抜き法ではなくメスによる切除術を
お勧めしています。完全摘出することがより大切だからです。
上記の患者さんも嚢腫壁の底に癒着があり、くり抜き法で完全に摘出できる可能性は
90% くらいと予測しました。
カリフォルニアからはるばる来られた患者さんです。全力で執刀します。
この大きさなら3mmトレパンでもよいですが、エコー所見での
癒着が気になるので4mm トレパンでくり抜きます。しっかりと
粥状物を出し切ることが大切。指の使い方がポイントです。
嚢腫壁がつるりと飛び出してきました。
摘出した検体です。一塊として取りきります。
病理組織標本で確認します。
手術1週間後です。かなり肉芽が盛り上がっていますが陥凹が
残っています。ハイドロコロイドを3~4日貼ってもらいます。
半年もすればニキビ痕くらいに落ち着きます。
その後、患者さんから添付写真とメールを頂きました。
写真では肉芽も盛り上がり順調な経過でした。
これからも多くの方を救って差し上げてください、と有難いコメントを頂戴しました。
はい、がんばります。