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粉瘤 それは手術ではない!
2013-03-17 UP! カテゴリー:粉瘤, 診療だより
しつこく粉瘤について述べます。
他院で粉瘤の治療を受けた患者さんも来院されます。
今回供覧するのは39歳の女性です。背中の粉瘤が化膿したことがあり、
切開排膿処置をそれぞれ異なるクリニックさんで2回受けています。
切開排膿と手術はまったく別のものです。
腫れたときは患者さんも動転しているので医師の説明を十分に理解されて
ないことが多々あります。
背中です。横方向に切開排膿後の瘢痕が2本あります。
切開排膿は手術ではなく処置です。粉瘤の袋が残っています。
一度化膿したことがある粉瘤は再び化膿することが多いので私は根治術を
お勧めしています。
話は変わりますが、
メスで粉瘤を切開して中身(角質)だけ出す医師もいると患者さんから聞いた
ことがあります。
それは手術ではありません!
嚢腫壁(袋)が残っていますからまた膨らみます。
中途半端なことをされると癒着を生じ抜き法ができなくなります。
今回の症例は2回の切開排膿歴があるので嚢腫壁が広がっている可能性が
あります。
エコー検査で確認します。やはり嚢腫壁が水平方向に不整に広がっています。
エコー所見、触診から残った嚢腫壁をマーキングします。
手術は取り残しがないよう大きく切除します。さすがにくりぬき法では取れません。
手術直後です。残った瘢痕も切除すればよかったですね。
少し反省しています。
くりぬき法の手術時間は10分~15分です。
メスで行う手術は40分くらい要します。負担がずいぶん違います。
切開排膿歴がある粉瘤は瘢痕で覆われ、瘢痕中に毛細血管が増加しています。
手術後に血腫が生じないようていねいに止血します。
私は皮膚外科医ですので傷痕が残らないよう真皮縫合をしっかりと行います。
術後1週間、抜糸前の写真です。
手術翌日から石鹸で創部を洗ってもらいます。2日目からお風呂もOK。
傷が気になる人は2ヶ月くらいピタシートを貼ってもらいます。
病理組織検査です。粉瘤は完全に取れ切れています。大きな瘢痕組織、分かりますか?
切開排膿は手術ではなく処置です。いずれ根治術が必要です。
粉瘤の中身(内容物)だけ出すのは手術ではなくナンセンスな行為です。
炎症後の粉瘤もプロの皮膚外科医がメスで切除すればまず大丈夫です。
一番よいのは化膿する前に受診することですね。
【注 意】
粉瘤に発赤・腫脹などの炎症所見がある場合は手術の時期ではありません。
なるべく早く地元の病院(皮膚科・形成外科・外科など)を受診してください。