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血管病変 -血管拡張性肉芽腫-
2013-10-28 UP! カテゴリー:血管腫, 診療だより
ちょっと気になる症例についてお話します。
ブログに協力していただいた患者さまに感謝します。
35歳の女性です。妊娠9ヶ月です。
当院を受診される3週間前より、上口唇に赤い腫瘤が出現。
腫瘤はとても出血し易く、とてもお困りでした。かかりつけの皮膚科で冷凍凝固療法(液体窒素)を受けるも、
腫瘤は増大するため、某大学病院皮膚科を紹介されました。そこでも冷凍凝固療法を施行され、なぜか開業医へ紹介。
開業医の医師曰く、しばらく時間がかかるでしょうと。
本人にとっては一刻を争う事態です。
インターネットで当院のことを知り、受診されました。
出血すると、押さえても30分くらい血が止まらないこともあったそうです。
とにかく、早くなんとかして欲しいと。臨床的に血管拡張性肉芽腫を疑います。
無色素性悪性黒色腫を鑑別するため、ダーモスコピー診断を行います。根元の紅色腫瘤は均一なmilky red color、不整な血管増生はありません。
高周波ラジオ波メス(サージトロン)で腫瘤の根元を切除しました。
どこまで切り込むかは経験です。
病理組織検査は血管拡張性肉芽腫です。
上方は痂皮(壊死)、根元に増生、拡張した血管が見えます。傷口が少し白いですが、経過とともになじみます。
患者さんからは随分と感謝されました。
今まではマスクをしても、食事をしても出血して大変だったと。血管拡張性肉芽腫は外傷などに伴う二次的な毛細血管増生が本態です。
女性ホルモンの影響か、妊娠中に急に大きくなることが多いです。妊娠中に増大する血管拡張性肉芽腫に冷凍凝固療法はたいてい効果が
ありません。むしろ、冷凍凝固療法の刺激で増大します。
高周波ラジオ波メスによる切除が非常に有効です。
創もかなりきれいになります。この症例をふりかえり、つくづく思いました。
大学病院クラスでも皮膚外科に精通している皮膚科医はわずかです。
プロの皮膚外科医がもっと増えるといいですね。