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血管病変 -静脈湖 venous lake-
2013-10-31 UP! カテゴリー:血管腫, 診療だより
前回、口唇の血管拡張性肉芽腫のお話をしました。
今回は血管病変つながりで、口唇の血管腫について。
口唇に生じる青赤色の軟らかい小腫瘍(老人性血管腫)を
静脈湖(venous lake)と呼びます。外傷などが原因かと、個人的には考えています。
だから、歯があたりやすい下口唇にできるのかな?この病変をメスで切除するのは大変です。手術創が赤唇部を超えるからです。
数年前、日本皮膚外科学会でサージトロンによる静脈湖治療のポスター発表を見ました。
とても良い方法と思い、私も現在は同じ手法を使わせてもらっています。ちなみにサージトロン(高周波ラジオ波メス)はこのような医療機器です。
ハンドピース先端につける電極が多種類なのが特徴の一つです。
針電極を用います。局麻した後に血液を吸引して、針電極で焼灼します。
通電時間がポイントです。粘膜がじりじりと白くなるくらいまで通電します。以前は炭酸ガスレーザーで静脈湖を治療していました。
それも悪くはないのですが、サージトロンのほうが瘢痕が少ないことに気づきました。
炭酸ガスレーザーでは、静脈湖を上から健常表皮を含めて焼灼します。
サージトロンは針の先端を血管病変の中央に挿入、焼灼するため病変周囲の健常組織
へのダメージが比較的少ないのではと想像しています。静脈湖の患者さんは時々来られます。
とてもきれいな女性のかたです。
某総合病院形成外科を受診。メスで切除するしかない、傷は残るとはっきり
言われたそうです。静脈湖の治療 = メスでの切除
このような固定観念があるのかもしれません。
私も以前はそのように思っていました。サージトロンによる治療は傷の仕上がりもきれいです。
再発はとても少ないです。話は変わりますが、
第11回JSCR学術集会では湘南鎌倉総合病院 形成外科の山下理恵先生と
壇上で静脈湖について討論しました。山下先生によると、静脈湖治療の第一選択はロングパルスヤグレーザーです。
再発率が気になるところですが、当院にもロングパルスヤグレーザーがあります
ので試してみるつもりです。医師としての私が怖いのは、固定観念に陥ることです。
つねにチャレンジし続けたいです。