診療だより
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脂肪腫 -若き皮膚外科医たちへ-
2013-11-21 UP! カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより
かつての上司に言われました。
「君もそろそろ若い先生を育てることを考えなくてはいけないよ。」
その通りです。
いろいろな先生に教えていただき、ここまで到達しました。ホームページの場ですが、皮膚外科を志す若き皮膚科医たちへ。
愛のメッセージ、第2弾。今回のテーマは、脂肪腫です。
41歳の女性。右背中の脂肪腫です。エコー診断。どれが脂肪腫か、わかりますか?
紡錘形のかたまりが脂肪腫です。子供のお落書きのような絵ですみません。
脂肪腫は筋膜と接して局在しています。
背の脂肪腫は大きくなると違和感、肩こりを訴えることがあります。筋膜への影響があるのかもしれません。
斜め横方向のラインが Langer皮膚割線です。
この方向に切開すると、創が目立ちにくいと言われています。
本当にそうでしょうか?顔の皮膚割線は、それでよいと思います。
四肢、軀幹は、動いたときの緊張を考えるとよいです。患者さんに上半身を動かしてもらい、動きが少ない縦方向に切開します。
こういうことは、教科書には書かれていません。剪刃(ハサミ)で切除するのもよいですが、皮膚腫瘍はメスで切除するのが
基本です。メスから伝わる感覚を通して、皮膚腫瘍と正常組織の境を認識して、過不足
なく腫瘍を摘出します。若い先生がたは、メスで摘出する習慣を持っていただきたい。
悪い癖は生涯残ってしまいます。手術がうまくなりたいならば、うまい先生の手術を見て、英文論文で術式を
学ぶことをお勧めします。脂肪腫は、指もしくは筋鈎での鈍的剥離が手術最大のポイントです。
脂肪腫が大きくなるほど、dead space(死腔)も大きくなり、それに比例
して、皮下血腫のリスクが高まります。止血操作はしつこいくらい行ってください。
摘出します。大きな脂肪腫に、娘脂肪腫がくっついています。
親子脂肪腫でした(勝手に命名)。検体です。きれいに全摘しました。病理組織検査の結果は脂肪腫です。
病理組織検査は必ず提出しましょう。少し盛り上がるように吸収糸(この症例は4-0 PDS)で真皮縫合します。
今回はドレーンは留置しませんでした。最初は、切開線を小さくすることにとらわれず、脂肪腫の大きさに合わせて切開
すると、腫瘍が取りやすいです。指での鈍的剥離が、うまくできるようになった時点で、切開創を少しずつ小さくする
のがよいと思います。がんばってください。
第29回日本皮膚外科学会は和歌山で開催されます(平成26年9月13~14日)。
和歌山県立医科大学(会頭 山本有紀先生)が事務局です。全国の若き皮膚外科医よ、和歌山で会いましょう!