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肝斑 -その類縁疾患-
2014-03-18 UP! カテゴリー:しみ フォトRF, 診療だより
色素斑(シミ)の治療は、ほんとうに奥が深いです。
ときどき、気が遠くなることもあります(笑)。
当院のブログに協力くださり、誠にありがとうございます。
76歳の女性の方です。
当院を受診される5ヶ月前より、両頬に色素斑が出現。
某市民病院皮膚科で生検を受け、色素沈着と診断。
某美容皮膚科クリニックでビタミンC導入などを受けるが、変化ないため
当院を受診されました。美容皮膚科で毎回、化粧品を勧められ、その金額が1回で3万円くらい
するのに嫌気が差したのが、本当のところのようです。正面の写真はお出しできませんが、前額、口唇周囲にも色素沈着が目立ちます。
診断はなにか? そして最適な治療法は?
これは難しいです。
患者さんのお話によると、日常でかなり強く顔を擦っていると。
肝斑に類似した疾患を考えます。色素斑のダーモスコピー所見です。色素が網目状の分布を呈しています。
色素斑の経過、患者さんのスキンケア習慣、臨床・ダーモスコピー所見などから、
葛西健一郎先生が提唱される「肝斑類縁疾患・頬外側型色素沈着」と考えました。商売上手なJMEC社と組んで、Qスイッチヤグレーザーを購入して、レーザートーニングで
一儲けしようと思ったこともあります。臨床医としてのプライドが許せませんでした。治療はスキンケア指導につきます。
絶対に擦らせない。
不適切な化粧品、摩擦などの炎症が関与していることが多いようです。慢性炎症が関与しているので、弱いステロイド軟膏の外用が有効なことがあります。
<この症例への私の治療>
徹底したスキンケア指導、トラネキサム酸500mg内服、ロコイド軟膏とプロペトの1:1混合
外用。1ヶ月毎に、外来を受診してもらい、厳しく肌をチェックします。
まだ治療の途中ですが、患者さんの表情に笑顔が見られるようになってきました。
肝斑治療の目安が1年~1年半。
このタイプの頬外側型色素沈着は、肝斑の倍の2年~3年を目安にしています。もちろん、高額なお化粧品を売りつけたりしません(笑)。
ハイドロキノン軟膏を処方したことがありますが、刺激が強く使用できませんでした。
この症例は、いたずらに外用剤を処方しないほうが無難なようです。患者さんは生きた教科書であり、患者さんから医師は臨床を学びます。
今回のような患者さんが、名古屋で竹の子のように増えた美容皮膚科を受診すれば、
どんな治療を受けることでしょう?診断をつけてもらうことはないでしょう。
「シミですね。はい、とりあえずなんかレーザーしましょう。セットがお得です。
バリューセットがあります(マックかよ?)。ついでにお化粧品もどうですか。」こんなノリでしょう。
Gentle LASEによるレーザーフェイシャル、Med Light C6によるレーザートーニング
いつまでも、こんなことをしていて、よいのでしょうか?トーニングが本当に意味をなすのか、私には分かりません。
患者さんにとってbetter な治療を、患者さんといっしょに考えていきたいですね。
最後に。
この症例の治療について、多くのアドバイスを頂いた葛西形成外科 葛西健一郎先生に
深謝いたします。