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頭の腫瘍 -外毛根鞘性嚢腫-
2014-05-15 UP! カテゴリー:粉瘤, 診療だより
頭によく生じる腫瘍。
多いのが外毛根鞘性嚢腫、粉瘤の親戚です。
他には、脂肪腫、めずらしいですが骨腫など。48歳の女性です。
10年前より頭にある腫瘍が炎症を生じたため受診されました。感染がひどかったため、抗生剤投与のみでは対応できず、切開排膿しました。
頭は出血が止まりにくいので大変です。
残念ですが、一度化膿した嚢腫性病変はくりぬき法は不適応です。
エコー検査でおわかりのように、不整型に増殖、周囲組織との癒着が強いからです。
頭の腫瘍は大変です。
大きい場合は入院して、治療を受けたほうが無難です。
私もよく総合病院に紹介しています。この症例は切開排膿を私が行っているので、当院で治療しました。
毛流の方向を考え(垂直方向がよい)、メスで切除します。境界がモコモコしています。
腫瘍の底面が下床と強く癒着しているため、エンパイアニードル凝固モードで筋膜を含めて
切除摘出します。出血させないことがポイントです。
切除した検体です。頭皮は緊張が強いので、切除する皮膚は最小限にとどめます。
病理組織検査です。外毛根鞘性嚢腫の像です。完全に摘出されています。
粉瘤とよく似ていますが、表皮細胞が顆粒層を経ずに角化しているのが特徴です。
私は手術翌日から頭をシャンプーで洗っていただいています。
患者さんは驚かれますが、そのほうが感染せず、創の状態も良好です。
手術1週間後。抜糸直前の写真です。まずまずの状態でしょうか。
以前は頭の創は真皮縫合をしませんでした。真皮縫合による脱毛を危惧したからです。
そのため2回に分けて抜糸していました。2週間もすると、皮膚を縫った糸の周りに軽い炎症を生じることがあります。
PDSなどの吸収糸(溶ける糸)を用いると、脱毛しないことが分かりました。以上の2点から、現在では吸収糸で真皮縫合を行い、皮膚を細い糸で軽く縫合する
ようにしています。いろいろな意味で創の経過は良好です。
皮膚外科ですが、美容外科の修練も受けていますので、美容のよいところを取りいれ
ています。目立たない創を目指した手術を心がけています。
【注 意】
粉瘤に発赤・腫脹などの炎症所見がある場合は手術の時期ではありません。
なるべく早く地元の病院(皮膚科・形成外科・外科など)を受診してください。