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汗管腫 -やっかいなぷつぷつ-
2014-06-19 UP! カテゴリー:エルビウムヤグレーザー, 皮膚腫瘍, 診療だより
眼のまわりにできる白いぷつぷつ。
女性に多いです。
気になって皮膚科を受診しますが、
放って置くしかしょうがない、と言われてお終いです。汗管腫( Syringoma )は確かに治療が難しい。
私ですら、そのように思います。
根治は難しいかもしれませんが、目立たなくすることは可能です。
ブログに協力して頂いた患者さんの治療経過を見ながら、
当院の治療についてお話します。今回は話が長くなりますが、最後までお付き合い下さい。
36歳の男性です。下眼瞼を中心に白色の丘疹が多発しています。
写真は右眼ですが、左眼にもプツプツはあります。
毎朝、顔を見るたびに、とても気になるそうです。汗管腫は女性の眼瞼に好発する小丘疹、エクリン汗管の限局性増殖です。
(皮膚科学 第9版 金芳堂より)以前は炭酸ガスレーザーで丘疹を一つずつ焼灼していました。
熱エネルギーが蓄熱してしまい、治療後に瘢痕を生じることがあります。汗管腫は腫瘍の深さが人によって異なります。
腫瘍の深さを確認することが大切と考えるようになりました。2mm トレパンで生検して、病理組織検査で深さを確認します。
7-0 ナイロンで一針縫合するので、傷は目立ちません。一番下のピンク色の細長い塊が眼輪筋です。
その上にエクリン汗器官の分泌部があります。汗管腫の腫瘍細胞は真皮浅層(乳頭下層)に限局しています。
汗管腫のどんな顔つきをしているか?
索状物、丸い房構造、ドーナツ状構造(中に分泌物)といろいろです。
汗管腫の丘疹1つにこれだけの細胞があります。
汗管腫の治療が難しいのは、これだけの細胞を間引かなくてはならないことです。ホクロのレーザー治療が、母斑細胞すべてを消滅させなくともそこそこの結果になります。
汗管腫の治療も細胞をある程度間引きすれば外観上は目立たなくなります。
ただし、将来的な再発の問題は残ります。無理をして瘢痕を残すほど照射するよりは、傷が残さないように気をつけ、そこそこ
目立たなくすることを私は目指しています。なにを用いるか?
エルビウムヤグレーザーでしょう。組織ダメージが少ないからです。
茄子を照射したところです。蓄熱せずに組織が蒸散するので、照射部位どうしの干渉が
ありません。このことは、丘疹が密に増生する汗管腫の治療に最適です。この方は皮膚生検で汗管腫は浅いところに限局していたので、浅く照射しました。
通常はもう少し深く照射します。照射5日後です。治療して2週間は厳重に閉鎖療法をお願いします。
汗管腫の治療は、治療する医療サイドも患者さんも本気の覚悟が必要です。
照射して1ヶ月が経過しました。淡いピンク色が残りますが、いづれ消退します。
当院の汗管腫の治療戦略をまとめると、
①皮膚生検で汗管腫の深さを確認する。
②病理組織検査の結果を参照にエルビウムヤグレーザーで照射する。
③10日~2週間の閉鎖療法を行う。
*治療は片側ずつ行うことが多いです。いずれ、もっときれいに仕上がった症例をブログで登場させます。
乞うご期待!