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粉瘤 -炎症について-
2015-11-10 UP! カテゴリー:粉瘤, 診療だより
数年ぶりに粉瘤について書きました。
粉瘤はアテローム、表皮嚢胞などとも呼ばれます。
表皮が真皮内に下掘れして嚢胞ができると私は習いました。
粉瘤は毛嚢の非常に浅い部位が狭窄することにより、毛嚢漏斗部が
拡張して貯留性の嚢胞となるようです。
(みき先生の皮膚病理診断 ABC ②付属器系病変より)粉瘤は放置してよいか? 早期に手術すべきか?
これは難しい問題ですね。
放置して粉瘤がなくなることはなく、次第に大きくなります。
一番やっかいなのは、粉瘤は炎症を生じる頻度が高いことです。この粉瘤のエコー像です。
小さな粉瘤では、エコー像も典型像が描出されません。
下に大きな血管があるのが恐いですね。
摘出した粉瘤の病理組織検査です。
拡大像です。
粉瘤の袋の下が破れて、中身(ケラチン)が飛び出ているのが分かります。
ここから異物反応が生じ、強い炎症反応へと移行します。粉瘤のへそから細菌感染が始まり、炎症が広がると考えられていました。
①赤く炎症を生じた部位が、へそから離れていることが多い。
②抗生物質を投与しても、炎症が改善されない。上記の2点をしばしば経験します。
粉瘤の炎症の始まりが、袋からケラチンがこぼれることによる異物反応ならば
上記2点も納得できます。この見解は、第114回日本皮膚科学会総会で大阪医療センター皮膚科の
為政大幾先生が発表されていました。やはり学会には参加して、勉強を続けることは大切です。
この歳になっても、得るものが多いです。粉瘤は積極的に取るべきかどうか?
なんでもかんでも取る必要はないと思います。
臭いや見た目などが気になるようなら、取ればいいと考えています。顔などは粉瘤が小さくとも、炎症が生じる前に切除したほうがよいでしょうね。
【注 意】
粉瘤に発赤・腫脹などの炎症所見がある場合は手術の時期ではありません。
なるべく早く地元の病院(皮膚科・形成外科・外科など)を受診してください。