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眼瞼下垂修正手術 ごめんね?
2015-11-26 UP! カテゴリー:眼瞼下垂, 診療だより
眼瞼下垂の修正手術をずいぶんと手がけてきましたが、
驚かされることがあります。今回は驚きの症例、サブタイトルは「ごめんね」。
ブログにご協力頂いた患者さまに心より感謝いたします。51歳の女性です。
名古屋市内の総合病院形成外科で眼瞼下垂手術を3回も
受けられました。ハードコンタクト性眼瞼下垂です。
「簡単な手術ですよ」と勤務先の形成外科の女医さんに手術を勧められました。左眼はまったく改善せず、むしろ瞼が重たくなりました。
左眼は2回の修正術を含め計3回の手術を受けています。修正術は2回とも、皮膚を切除するだけの手術だったそうです。
結局、左眼は改善されず、
執刀医の女医さんからは「ごめんね!」ですまされたそうです。ごめんね、涙。
田原俊彦、じゃないよね。何度もメスが入っていると、瘢痕で修正術の難易度があがります。
修正術を引き受けるかどうか悩みましたが、後輩医師からの紹介であったこと、
患者さんが勤務する病院は、私もご縁があったことより引き受けさせて頂きました。前医で皮膚をかなり切られているので、皮膚切除は最小限にします。
睫毛からの重瞼線の距離が揃うようにデザインします。
左眼の手術野です。
信州大学方式とのふれこみで手術されたそうですが、眼窩隔膜は切開されておらず、
信州大学方式ではありません。まあ、患者さんにはわかりませんよね。
まさか・・・。
挙筋腱膜からの糸は瞼板でなく、ミュラー筋に縫合されている。
これでは瞼は上がりません。むしろ瞼の挙上を妨げています。
執刀医は瞼板に縫合したつもりで、ミュラー筋に縫合したのでしょう。
どう考えても、これはいただけません。瞼板は硬いので、糸を縫いつけるときに抵抗があります。
この抵抗を感じながら縫合するのが原則です。術中に患者さんに聞いてしまいました(ほんとうはいけないことです)。
なんで、同じ先生に3回も手術してもらったの?「勤務先の総合病院に形成外科医は複数いますが、眼瞼下垂手術ができる
先生はその女医さんだけだったので‥‥」ぎゃふん!!
ミュラー筋に絡まった糸を外すのは大変でしたが、挙筋腱膜をミュラー筋から
剥離同定して、瞼板へ縫合。手術1週間後、抜糸直後です。この時期は腫れています。
腫れていますが、眼が開けやすいと。
手術1ヵ月後です。3回も手術を受けているのでまだむくみがあります。
左眼が開くようになり、嬉しいと。
眼を閉じた状態です。まだ創が赤いですが、半年ほどで消えます。
写真の見てお分かりのように、 眼瞼内部の手術を行うことで、眼を閉じたときの
傷の状態もずいぶんと改善します。いろいろと思うところが多い症例でした。
①挙筋腱膜を瞼板に縫合せずに、ミュラー筋に縫合する初歩的なミス。
②左眼が開かない理由を深く考えず、皮膚縫合のみを2回も行う安易さ。
③眼瞼下垂手術を簡単な手術だからと軽く勧める軽率さ。眼瞼下垂手術は簡単ではありません。
全身全霊をぶつけても、満足していただけないこともあります。それにしても、「ごめんね!」ですまされてしまい、患者さんは本当にお気の毒です。。
眼瞼下垂手術は、修正手術のほうが難易度がずっと上がります。
普段から修正手術を行っている医師のほうが、初回手術も安心してまかせられる
のかもしれませんね。
担当医選びだけはくれぐれも慎重にしてください。
眼瞼下垂手術は、つまるところ執刀医のセンスが大きいです。
総合病院だから安心と考えるのではなく、症例写真などをじっくり検討されるとよいでしょう。