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粉瘤くり抜き法 「三種の神器」 ー玉ー
2020-06-10 UP! カテゴリー:粉瘤, 診療だより
さあ、玉(たま)です。
今回は、三種の神器の二番目です。
くり抜き法「三種の神器」の玉は、超音波診断装置だと、考えています。
皮膚腫瘍は、圧倒的に粉瘤が多いですが、もちろんそれ以外の
皮膚腫瘍もあります。
皮膚線維腫、皮膚混合腫瘍、石灰化上皮腫、血管平滑筋腫、神経鞘腫など。
いずれも他院で粉瘤と診断され、当院を受診した疾患群です。
今回は、55才の女性にご協力いただきました。
みなさまの善意で、このブログは支えられています。
診察時のエコー検査がいかに大切かを、全力でお話します。
55才女性、左鼻翼周囲のできものです。
できものが大きくなり心配になり、F医科大学附属病院を受診。
最初は皮膚科を受診。
エコー検査、MRI画像検査を受け、粉瘤を疑われたそうです。
なるべく傷を残したくない旨を、伝えたところ、同病院形成外科を紹介されました。
形成外科の先生も、いろいろと熱心に考えられたようです。
口腔内からのアプローチもあるが、粉瘤は皮膚と連続しているので、
難しいかもと。
形成外科の先生が悩まれる気持ちも、よくわかります。
さあ、ここからが本番。
SSクリニックを受診したときの、エコー検査を供覧します。
12MHzのエコー画像です。
正直、この画像では、皮膚腫瘍を粉瘤と確定するのが、難しいです。
腫瘍が下の筋層と接しているので、嚢胞性病変に特徴的な外側陰影、
底面後方エコー増強が、わかりづらい。
22MHzのエコー画像です。
あっ、上方に、ヘソに対応したりんごのツルに似た構造が、見えます!
これが、高周波プローブの威力です。
これで、腫瘍は粉瘤と、診断できます。
この時点で、MRI画像検査は不必要ですからね。
なるべく傷を残したくない、という患者さんのリクエストに沿います。
傷を残したくないのは、術者の私も同じです。
3mmの穴をあけ、袋を底から全部取り切ります。
(傷を小さくしたかったので、4mmではなく、あえて3mmトレパンを選択しました)
袋はなかなか深く、上唇挙筋に癒着していました。
病理組織検査。袋の入り口の所見です。
エコーで、リンゴの果梗にあたる粉瘤のヘソ部分は、病理組織を見ると、
アメーバのように袋が、発達しているのがわかります。
アメーバの部分を取り残すと、粉瘤は再発します。
エコーで袋の形態の目星をつけ、無影灯で視野を明るくして、特殊な医療ハサミ
(三種の神器 剣)で、しっかり取ることが肝要です。
剣(つるぎ)に関しては、次回のブログでね!
手術して、2週間が経過しました。
少し、陥凹が目立つ時期ですが、半年もすれば、目立たなくなります。
結果として、患者さんには、とても満足してもらいました。
いつも思うのですが、
皮膚腫瘍の専門家は、形成外科医ではなくて皮膚科医です!
普段から、病理組織検査を見慣れている皮膚科医は、どうしたら
最少のダメージで、腫瘍が取り切れるかを考えています。
皮膚癌もそうですね。
問題は、安直に形成外科医に投げ出してしまう皮膚科医が、多いこと
です。それは、大学病院レベルでもあることです。
まあ、愚痴はこのくらいにして。
現在の超音波診断装置(エコー)は、とても優れています。
これから購入する先生は、22MHz以上の高周波プローブが使用できる
機種を、選んでください。得られる画像が、段違いですから。
粉瘤くり抜き法「三種の神器」玉=超音波診断装置でした!
ここだけの話ですが、
エコーもないような施設で、皮膚腫瘍の手術は、受けないほうがいいですよ。
皮膚腫瘍の手術は、術前の万全の準備で、結果が半分以上きまりますから。
今回は、少し毒舌ブログでした。すみません。