診療だより
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老人性血管腫 -いろいろな治療法-
2014-05-22 UP! カテゴリー:血管腫, 診療だより
胸にできる赤いぷつぷつ。
なぜか、女性に多いようです。
気にされる人は、すごく気にします。ブログに協力して頂き、ありがとうございます。
28歳の女性です。
頚の赤いできものを気にされて受診されました。ダーモスコピー診断です。血管が大きく拡張しています。老人性血管腫の像です。
数年前まで、老人性血管腫を高周波ラジオ波メス(サージトロン)、エルビウムヤグレーザーで 治療していました。
ロングパルスヤグレーザーを導入してからは、こちらも治療に用います。
ロングパルスヤグレーザーで照射しました。治療は一瞬です。黒くなりました。
黒く変化したものをダーモスコピーで確認します。みごとに変化しています。
レーザー照射で熱くなった赤血球が血管壁を破壊します。治療して1ヵ月後です。紅斑が残りますが、かなりすっきりしました。
3ヶ月も経てば、分からなくなるでしょう。本人さんも満足していました。ロングパルスヤグレーザー照射1ヶ月後のダーモスコピー。
大きく拡張した血管は跡形もなく消退しています。頚、胸の老人性血管腫(cherry angioma)は、きれいに治療することが可能です。
以前はエルビウムヤグレーザーで照射していました。
最近の第一選択はロングパルスヤグレーザーです。
これで反応が悪い場合(赤色が変化しない)は、高周波ラジオ波メスで治療します。
治療の選択肢が複数あったほうが、安心、安全、確実です。
胸は肥厚性瘢痕になりやすい部位なので、注意が必要です。
よりよい治療を提供できるよう、がんばります。 -
血管病変 -静脈湖 venous lake-
2013-10-31 UP! カテゴリー:血管腫, 診療だより
前回、口唇の血管拡張性肉芽腫のお話をしました。
今回は血管病変つながりで、口唇の血管腫について。
口唇に生じる青赤色の軟らかい小腫瘍(老人性血管腫)を
静脈湖(venous lake)と呼びます。外傷などが原因かと、個人的には考えています。
だから、歯があたりやすい下口唇にできるのかな?この病変をメスで切除するのは大変です。手術創が赤唇部を超えるからです。
数年前、日本皮膚外科学会でサージトロンによる静脈湖治療のポスター発表を見ました。
とても良い方法と思い、私も現在は同じ手法を使わせてもらっています。ちなみにサージトロン(高周波ラジオ波メス)はこのような医療機器です。
ハンドピース先端につける電極が多種類なのが特徴の一つです。
針電極を用います。局麻した後に血液を吸引して、針電極で焼灼します。
通電時間がポイントです。粘膜がじりじりと白くなるくらいまで通電します。以前は炭酸ガスレーザーで静脈湖を治療していました。
それも悪くはないのですが、サージトロンのほうが瘢痕が少ないことに気づきました。
炭酸ガスレーザーでは、静脈湖を上から健常表皮を含めて焼灼します。
サージトロンは針の先端を血管病変の中央に挿入、焼灼するため病変周囲の健常組織
へのダメージが比較的少ないのではと想像しています。静脈湖の患者さんは時々来られます。
とてもきれいな女性のかたです。
某総合病院形成外科を受診。メスで切除するしかない、傷は残るとはっきり
言われたそうです。静脈湖の治療 = メスでの切除
このような固定観念があるのかもしれません。
私も以前はそのように思っていました。サージトロンによる治療は傷の仕上がりもきれいです。
再発はとても少ないです。話は変わりますが、
第11回JSCR学術集会では湘南鎌倉総合病院 形成外科の山下理恵先生と
壇上で静脈湖について討論しました。山下先生によると、静脈湖治療の第一選択はロングパルスヤグレーザーです。
再発率が気になるところですが、当院にもロングパルスヤグレーザーがあります
ので試してみるつもりです。医師としての私が怖いのは、固定観念に陥ることです。
つねにチャレンジし続けたいです。 -
血管病変 -血管拡張性肉芽腫-
2013-10-28 UP! カテゴリー:血管腫, 診療だより
ちょっと気になる症例についてお話します。
ブログに協力していただいた患者さまに感謝します。
35歳の女性です。妊娠9ヶ月です。
当院を受診される3週間前より、上口唇に赤い腫瘤が出現。
腫瘤はとても出血し易く、とてもお困りでした。かかりつけの皮膚科で冷凍凝固療法(液体窒素)を受けるも、
腫瘤は増大するため、某大学病院皮膚科を紹介されました。そこでも冷凍凝固療法を施行され、なぜか開業医へ紹介。
開業医の医師曰く、しばらく時間がかかるでしょうと。
本人にとっては一刻を争う事態です。
インターネットで当院のことを知り、受診されました。
出血すると、押さえても30分くらい血が止まらないこともあったそうです。
とにかく、早くなんとかして欲しいと。臨床的に血管拡張性肉芽腫を疑います。
無色素性悪性黒色腫を鑑別するため、ダーモスコピー診断を行います。根元の紅色腫瘤は均一なmilky red color、不整な血管増生はありません。
高周波ラジオ波メス(サージトロン)で腫瘤の根元を切除しました。
どこまで切り込むかは経験です。
病理組織検査は血管拡張性肉芽腫です。
上方は痂皮(壊死)、根元に増生、拡張した血管が見えます。傷口が少し白いですが、経過とともになじみます。
患者さんからは随分と感謝されました。
今まではマスクをしても、食事をしても出血して大変だったと。血管拡張性肉芽腫は外傷などに伴う二次的な毛細血管増生が本態です。
女性ホルモンの影響か、妊娠中に急に大きくなることが多いです。妊娠中に増大する血管拡張性肉芽腫に冷凍凝固療法はたいてい効果が
ありません。むしろ、冷凍凝固療法の刺激で増大します。
高周波ラジオ波メスによる切除が非常に有効です。
創もかなりきれいになります。この症例をふりかえり、つくづく思いました。
大学病院クラスでも皮膚外科に精通している皮膚科医はわずかです。
プロの皮膚外科医がもっと増えるといいですね。
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