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診療だより

皮膚腫瘍の記事一覧

  • おでこの脂肪腫

    2013-09-16 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    久しぶりに脂肪腫のブログを書きます。
    ブログに協力していただき、本当にありがとうございます。
     
    ちょっと不可解な出来事がありました。
     
    一宮市に在住の48歳の男性のかたです。
    おでこのできものが気になり、某病院の形成外科を受診。
     
    そのできものを取ると神経が切れて顔が変形するかもしれない。
    手術はしないほうがよい、と担当医に言われたそうです。
     
    そんなバカな・・・。
     
    48歳男性。左前額が膨らんでいます。

     
     
    おでこにできる皮膚腫瘍は脂肪腫、粉瘤の頻度が多いです。
    眉毛付近なら石灰化上皮腫。
     
    触るとなだらかに軟らかく、脂肪腫を疑いました。
     
    エコー検査です。高エコーのmass が骨膜上に局在。脂肪腫の像。
     
     
    前額の脂肪腫を摘出して顔が変形することはありません。
     
    患者さんには
    「前の病院のことは忘れましょう。皮膚腫瘍を専門とする私がきっちり
    治します。おでこの脂肪腫は筋肉の下にあるので筋肉も切開します。
    縫合するので問題はありません。病変が深いので手術の後に腫れる
    ことがあります。1~2ヶ月は傷付近の感覚が鈍いですが、
    顔は変形しません。ただし、傷は少し残ります。」と説明しました。
     
    前額のしわに沿って、皮膚を最小限切開します。
     
    前額の脂肪腫はほとんどが前頭筋下で骨膜にへばりつくように
    局在しています。
     
    前頭筋にダメージを与えることなく切開することが、
    この手術のポイントです。

     
    私はサージトロンのエンパイアニードルで筋層を切開します。

     
     
    筋層の走行に沿い、縦に切開する方法もありますが、皮膚の
    開きが狭くなるので、私は横方向に切開します。
     
    骨膜より脂肪腫を丁寧に剥がし取ります。
    ここで出血させないことが腫れを少なくするポイントです。

     
     
    摘出した脂肪腫です。きれいに取れています。

     
     
    患者さんから再発しませんかと質問されることがあります。
    下手な医師が手術すると再発します、と答えています。
     
     
    吸収される糸で筋層を縫合します。

     
     
    吸収糸で真皮縫合を正確に行います。

     
     
    手術翌日に受診してもらいました。
     
    皮下血腫もなく、経過は良好です。
    もちろん、顔の変形などありませんよ(笑)。
     
    前額の脂肪腫にサージトロンのエンパイアニードルを使うように
    なってから、腫れなどの術後侵襲が明らかに減りました。
     
    たかが、前額の脂肪腫ですが、症例を一つずつていねいに治療
    していると、いろいろな工夫が生まれてきます。
     
    「よりダメージが少なく、より傷痕がきれい」
    そんな手術を提供していきたいです。

  • 脂肪腫 TWINS

    2012-10-18 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    脂肪腫のブログは封印していましたが、患者さんから載せて欲しいと
    逆指名がありましたので筆を取りました。
     
    41歳の僧侶さん。右肩のしこりが主訴です。

     
     
    診察の実況中継
    私   「しかし、ずいぶんと育てましたね~」
    僧侶 「どんどん大きくなってきました。もう限界です。取って欲しいです。」
     
    私   「さすがにここまで大きくなると・・・。」
    僧侶 「何とかなりませんか?」
     
    私   「いや~、あんまり大きいのは大学病院とかで手術したほうがよくないですか?」
    僧侶 「ホームページでは大きな脂肪腫が取られていました。」
    私   「まあ、ホームページだと簡単そうに見えるんですよ。ウソは書いてないですけど。」
     
    僧侶 「ホームページを見てここのクリニックで取ってもらうと決めて来たんです。」
    私   「そんな、勝手に決めて来られても・・・。」
     
    僧侶 「・・・。」
     
    禅問答ならぬ、お互いの駆け引きが続きます(笑)。
     
     
    右肩の脂肪腫の皮膚エコー診断
    脂肪腫(白い固まり)の内部エコーは均一。臨床でも皮膚に凹凸はなく硬さも均一。
    以上の所見から脂肪肉腫は考えにくい。下床の三角筋との癒着も強くはない。

     
     
    とりあえず4cm 皮膚切開することにしました。ここから写真は横向きになります。

     
     
    指を上手く使い鈍的剥離で脂肪腫を出します。

     
     
    なんと脂肪腫が2つ。双子や!

     
     
    なんとか全摘しました。これだけの脂肪腫がこの切開線ならまずまずでしょうか。

     
     
    脂肪腫もこれだけ育つとそれをつつむ被膜も厚くなります。

     
     
    きっちりと全摘するのがプロの皮膚外科医です。

     
     
    皮下に血抜きのドレーンを留置。真皮縫合をきっちりと合わせてから皮膚縫合します。

     
     
    二つに大きく分かれた脂肪腫は珍しいです。 LIPOMA TWINS
     
    僧侶さんには随分と感謝されました。手術中は全てを忘れ無心で執刀します。
    まさに涅槃寂静の世界でございます。
     
     
    【追 記】 反省を込めて。
    病理組織標本を確認すると通常の脂肪腫よりも脂肪細胞の核がやや大きいのが気になりました。
    私が最も信用するA医科大学附属病院病理部 H先生に診断をお願いしました。
     
    脂肪腫(spindle cell lipoma)を疑うが脂肪肉腫(well diff. liposarcoma)を完全に否定でき
    ないとのことで免疫染色(CD34)を追加しました。CD34 にてspindle cell は強陽性であり
    脂肪腫(spindle cell/ pleomorphic lipoma)と診断。良性だが大きいので局所再発の可能性
    は完全には除外できないとのコメントでした。
     
    僧侶さんにはそのままを説明ました。
    一塊としてきれいに摘出しているので再発の可能性は少ないと考えますが最低1年間は通院する
    ように説明しました。完全に摘出した自信はあります。
     
    今回の症例から反省すべきことがあります。
    あまりにも大きな脂肪腫はやはり総合病院で造影MRI 検査を行い脂肪肉腫の鑑別をしてから執刀
    にあたるべきであり、個人クリニックでの手術は控えたほうがよいと痛感しました。

  • 再びサージトロン dual EMC

    2012-06-15 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    クリニックに2台仲良く並んでいます。私はサージトロンのヘビーユーザーなのです。

     
    サージトロンdual EMC 。禁断の扉を開けてしまいました。
    スタン式モノポーラフォーセップで鶏肉の皮と身を剥離しているところです。

     
    つまんで止血凝固することもできます。一人何役もこなす凄いヤツです。

     
    鶏肉の身(筋組織)を切開します。熱ダメージが少なくきれいな切れ味です。
    この操作は筋層内の脂肪腫摘出目の下のたるみ取り(経結膜脱脂術)にいきてきます。

     
    cut/coag モードでの切開。cut モードよりはやや焼痂がつきます。

     
    エンパイアニードルでの切開。この切れ味は感動的ですね。

     
    炭酸ガスレーザー(エスプリ JMEC社)で切開しました。
    なるべく侵襲が少なくなるようSP(スーパーパルス)モードでfocous 焼灼しました。

     
    実は炭酸ガスレーザーのほうがずっとダメージが大きいのです。ちょっと驚きです。
     
    スタン式モノポーラフォーセップとエンパイアニードル。
    この二つは皮膚外科手術を大きく変える可能性を秘めていますね。
     
    今回の格言。食べ物は大切にしましょう。

  • サージトロン dual EMC 筋膜下脂肪腫への応用

    2012-04-03 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    毎日、ばりばりサージトロンdual EMC を使用しています。
    ちょっと面白い使い方を見つけました。
     
    右背の脂肪腫です。違和感があるそうです。
    触診でとても深く触れます。ひょっとして・・・?

     
    エコー検査です。僧帽筋の筋膜(白い複数の線に見えています)の下に脂肪腫は局在。
    僧帽筋を圧迫しています。違和感があるはずです。

     
    メスで皮膚を切開したあと、僧帽筋の筋膜をStan式モノポーラ・フォーセップ
    切開します。切開した筋膜の下に黄色い脂肪腫が見えます。

     
    モノポーラ・フォーセップで脂肪腫を僧帽筋から分けます。
    出血がなく、とても侵襲が少ないです。

     
    つるりと取れました。筋膜下の脂肪腫はやや手強いですがサージトロン dual EMC が
    あれば心強いです。

     
    筋膜をバイクリル(吸収糸)で縫合してドレーンを筋層内に留置して手術は終了です。
    翌日にドレーンを抜去しましたが出血はほとんどなかったです。
     
    サージトロン dual EMC でより負担が少ない手術ができそうです。

  • サージトロン dual EMC 脂肪腫への応用

    2012-04-03 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    サージトロン dual EMC 、とてもよいですね。
    発売してすぐに購入しました。これは買い!です。
     
    私は皮膚外科が専門です。
    久しぶりに皮膚腫瘍の治療について述べます。
     
    左肩の脂肪腫です。

     
    肩は傷が残りやすい部位なので最小切開で脂肪腫を摘出します。

     
    脂肪腫を下床の正常脂肪組織から剥離するのが手術のポイントの一つです。
    Stan式モノポーラ・フォーセップで脂肪腫を下床から剥離します。出血がなくこれはいい!

     
    モノポーラ・フォーセップの先端で出血点をつまみ止血もできます。
    バイポーラよりやや広い止血になります。まさに、一人二役です。

     
    脂肪腫がつるんときれいに取れました。

     
    Stan式モノポーラ・フォーセップ、使うほどに味が出ますね。

  • 脂肪腫 突然のFinal stage

    2011-02-03 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    あまり時間がありません。
     
    脂肪腫は今回のブログで一区切りさせてください。
    手術の上手な先生はたくさんいますので、まずは地元の先生に相談を!
     
    最後ですので、皮膚切開についての私の考えを述べます。
     
    右背中の脂肪腫です。わりと大きいです。
    まずは2cm の皮膚切開をデザインしました。

     
    脂肪腫を小さな皮膚切開で摘出するには指での剥離が不可欠です。
    メッチェン(医療用のハサミ)では脂肪腫の表層は剥離できても、側方~下床は
    なかなか剥離できないのです。
     
    図で示すとこのような感じです(下手くそな絵ですみません)。
    人差し指で脂肪腫を周囲組織からぐりぐりと剥離します。

     
    私のひとさし指の太さが2cm弱です。

     
    この症例では剥離しても腫瘍が飛び出てこないため、切開を1cm 伸ばします。

     
    やっと出ました。下は僧帽筋と癒着していました。

     
    全摘した脂肪腫です。このように全体として弾力性が強くぷりぷりとした脂肪腫は2cmの
    穴からはなかなか飛び出てくれません。切開の長さは脂肪腫の性質にもよりますね。

     
     
    もう一例、提示します。右肩の脂肪腫です。
    有名な女流作家さんです。わざわざ東京から来られました。

     
    けっこう大きいですね。
    サルサをたしなんでおり邪魔なようです。
     
    2cmの切開で取れるかな~?
    大作家の利き腕です。なるべく傷は小さくしたいですね。

     
    ひとさし指でぐりぐりして飛び出させます。

     
    どっどっと飛び出てきました。
    下床は三角筋と癒着していますが取れそうです。

     
    一塊として脂肪腫が取れました。完全に取りきれば再発はありません。

     
    皮膚外科学会で形成外科の先生が筋鈎を2本用いて脂肪腫を剥離摘出する演題を聴きました。
    指であれ筋鈎であれ鈍的な剥離が脂肪腫治療には重要だと思います。
     
    鈍的剥離では脂肪腫が周囲組織ときれいな層ではがれます。出血もほとんど出ません。
    きれいな層で剥がれる=腫瘍が完全摘出できている
     
    皮膚外科学会を通じてよりよい手術を普及していきたいです。

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