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診療だより

診療だよりの記事一覧

  • 感染性粉瘤について

    2014-02-06 UP!     カテゴリー:粉瘤, 診療だより

    粉瘤に感染が生じると赤くなり、痛くなります。

    その状態では手術できません。お近くの皮膚科へ、早く受診してください!

    抗生剤の内服、場合によっては切開排膿が必要です。
    感染が落ち着いて、1ヶ月ほどしたら手術が可能です。

    残念ですが、一度感染が生じると、くりぬき法は難しいです。

    今回は感染性粉瘤について。

    ブログにご協力いただき、本当にありがとうございます。

    53歳の女性です。数年前より右乳房内側にあった粉瘤が感染。
    地元の皮膚科で感染をコントロールした後に、当院をご紹介頂きました。

    右乳房内側に腫瘤があります。わずかですが発赤も残っています。
    痛みはなく、感染は落ち着いたようです。

     

    エコー検査です。嚢腫壁の輪郭が不整です。炎症後の所見です。

     

    エコー画像から、くりぬき法は不適応と診断。

    メスで切除するしかありません。
    が、胸は肥厚性瘢痕の好発部位です。

    私としてもあまり気が進みません。

    傷がかなり残る可能性があることを、じゅうぶんに説明します。
    傷が残っても、痛みが再発しないほうがよいとのこと。

    胸は直線の傷になると、肥厚性瘢痕のリスクが高くなります。

    乳房の内側縁に沿ってデザインします。

     

    感染後の粉瘤は、通常よりも広範囲に切除したほうが無難です。
    当然ですが、傷はひらきます。

     

    切除した検体です。

     

    病理組織検査です。粉瘤の壁の下方は破壊されています。

     

    粉瘤下方のアップです。しっかりと取り切れているのが、お分かりと思います。

     

    切除する境界、深さは経験と勘によるところが大きいです。
    メスで切り込むと、炎症がある部位は組織は硬い、色が白色、褐色変性しています。

    メスから伝わる指先の感覚、切り込んだ組織の所見を冷静に観察して、執刀します。

    この症例は二度と再発することも、痛くなることもないでしょう。

    吸収糸(4-0 PDS)で真皮縫合をしっかりと行い、創を盛り上げます。
    ナイロン糸でやさしく、あえて曲線となるように皮膚縫合します。

     

    胸の傷が残りやすい部位です。
    3ヶ月くらいテーピングをしてもらいます。

    手術1ヵ月後の写真です。

     

    胸の手術はほんとうに気が引けます。
    今のところ順調ですが、これから1年間は経過観察しないといけません。

    粉瘤は感染する前に治療するのがよいと、私は思います。

  • レーザー脱毛 -お口周りの手入れ-

    2014-01-19 UP!     カテゴリー:レーザー脱毛, 診療だより

    女性のお口周りの産毛。

    定期的に毛剃りをされるご婦人も多いようです。

    隠れたエチケットポイントだと思います。

    思い切って脱毛されてはどうでしょうか?

    産毛などのごく細の毛の脱毛は難しいです。
    エステやフォトフェイシャルなどの光脱毛では絶対に抜けません。

    shock lossで一時的に薄くなることはありますが、いづれもとに戻ります。
    私のかつての実体験です。昔の患者さん、すみません。

    もうJMEC社にはだまされません(笑)。

    レーザー脱毛は毛のメラニン色素に光エネルギーを反応させます。
    細い毛はメラニン色素が少ないので、反応させるのが大変です。

    強いパワーが必要ですが、皮膚を守る必要があります。

    一般にスポットが大きいほうが光が深部まで届きます。
    スポットが大きいと条件設定が制限されます。

    女性の口周りの脱毛。条件設定が難しいので、細心の注意を払い本気で照射しています。

     

    女性の口周り脱毛のポイントは細やかな条件設定です。

    毛が細いのでパルス幅を短く設定します。患者さんごとにハンドピースを変えます。

    表皮を損傷させないロングパルスヤグを選択し、ハイパワーで照射します。
    Gentle LASEなどロングパルス・アレキサンドライトで産毛を治療するのは困難でしょう。

    こだわりのハンドピースです。

     

    54歳の女性です。ブログに協力して頂き、本当にありがとうございます。
    産毛がないほうが、素敵ですよ。

     

    ロングパルスヤグレーザー照射後です。少し痛いです。照射後は赤くなります。
    一日経過すれば発赤はなくなります。

     

    4~5回の照射で80%以上の減耗を目指しています。
    評判は上々です。本気でやってますから。

    興味があるかたは、お気軽にクリニックにお問い合わせ下さい。

  • 眼瞼下垂手術 -修正手術について-

    2013-12-23 UP!     カテゴリー:眼瞼下垂, 診療だより

    ブログに協力して頂いた患者さんに感謝します。

    51歳の女性です。
    当院を受診(平成25年5月)する約2年前に某個人クリニックを受診。

    左眼が右より下がり、眼瞼下垂の傾向があるとのことで、
    左眼のみ眼瞼下垂手術を受けました(保険)。

    手術後より、治療を受けた左のまぶたが重くなったようです。

    当院受診時の写真です。
    左眼の重瞼ラインが広がり、左眼のうえのくぼみが深くなっています。

     

    治療を受けたクリニックの院長に相談したところ、
    保険診療だからこの程度でよいと、強く言われたそうです。

    まったく意味不明の言葉です。

    この患者さんを左眼を見て、筋腱膜を切られているなと、推測しました。
    手術後より左のまぶたが重い、重瞼線が広がっているからです。

    右眼も眼瞼下垂の傾向があるので、両眼の眼瞼下垂手術を行いました。

    やはり、左眼は挙筋腱膜が全長に渡り、すっぱり切れていました。
    セッシでつまんでいるのが切れた挙筋腱膜の断端です。

     

    挙筋腱膜を前転して、適正な位置で瞼板に固定します。

     

    術直後から左眼が開けやすくなったと、感謝されました。

    手術前の左まぶたです。重そうなまぶたです。

     

    手術2ヵ月後の写真です。
    まぶたが開き、重瞼幅、まぶたのくぼみも改善されています。

     

    眼瞼の手術を受けてから、まぶたが重くなった患者さんが来られます。
    挙筋腱膜が損傷された可能性があります。

    上眼瞼の構造はとても繊細です。
    執刀医は眼の解剖学を熟知する必要があります。

    これからも、よりよい眼瞼形成術を提供できるクリニックでありたいです。

  • 骨腫 -Osteoma-

    2013-11-28 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    おでこの皮膚腫瘍は、何か?

    前額部で多いのは脂肪腫です。
    頻度は少ないですが、骨腫と呼ばれる腫瘍もあります。

    今回は骨腫について。

    ブログに協力していただいた患者さまに、厚く御礼申し上げます。

    64歳 女性。 幼児期より、前額に膨らみがあったそうです。

     

    触ると、石のように硬いです。典型的な前頭骨腫の所見です。

    超音波検査。硬い腫瘍の表面で超音波が反射するため、無エコー領域が広がります。

     

    骨腫には専用の医療器具が必要です。以前は総合病院に紹介していました。

    ご指名があるので、購入しました。骨ノミとナイロンハンマーです。

     

    通常は髪の生え際を切開します。今回は前額のシワが深い
    ので、シワを利用して切開線をデザインします。1cm強です。

     

    前頭筋を露出します。骨腫はこの下にあります。

     

    白い塊が骨腫です。頭蓋骨と連続しています。

     

    骨ノミとハンマーを用い、ゴツンと剥離摘出します。
    骨ノミをなるべく水平方向に進めるのがコツです。コツ腫だけに、コツんと。

     

    きれいに取れました。表側です。

     

    裏側です。フラットな面で取れているのが分かると思います。

     

    病理組織検査です。骨細胞から構成される腫瘍です。

    創部にドレーンを留置して、筋層、真皮縫合、皮膚縫合と
    三層に縫合します。

    術後に上眼瞼が腫れました。
    骨腫の手術治療はやや侵襲が高い手術です。

    前額は脂肪腫もそうですが、筋層を切開すると、上眼瞼が腫れることがあります。
    手術前には、十分な説明が必要です。

    なかなか、骨腫をしっかりと治療する病院は少ないですね。

    総合病院の皮膚科・形成外科と骨腫をめぐって、いろいろとありました。
    とりあえず、私が頑張ります。

  • 脂肪腫 -若き皮膚外科医たちへ-

    2013-11-21 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    かつての上司に言われました。

    「君もそろそろ若い先生を育てることを考えなくてはいけないよ。」

    その通りです。
    いろいろな先生に教えていただき、ここまで到達しました。

    ホームページの場ですが、皮膚外科を志す若き皮膚科医たちへ。
    愛のメッセージ、第2弾。

    今回のテーマは、脂肪腫です。

    41歳の女性。右背中の脂肪腫です。エコー診断。どれが脂肪腫か、わかりますか?

     

    紡錘形のかたまりが脂肪腫です。子供のお落書きのような絵ですみません。

    脂肪腫は筋膜と接して局在しています。
    背の脂肪腫は大きくなると違和感、肩こりを訴えることがあります。

    筋膜への影響があるのかもしれません。

    切開デザインです。手術はデザインがとても大切です。

     

    斜め横方向のラインが Langer皮膚割線です。

    この方向に切開すると、創が目立ちにくいと言われています。
    本当にそうでしょうか?

    顔の皮膚割線は、それでよいと思います。
    四肢、軀幹は、動いたときの緊張を考えるとよいです。

    患者さんに上半身を動かしてもらい、動きが少ない縦方向に切開します。
    こういうことは、教科書には書かれていません。

    脂肪腫の底をメスで切除します。

     

    剪刃(ハサミ)で切除するのもよいですが、皮膚腫瘍はメスで切除するのが
    基本です。

    メスから伝わる感覚を通して、皮膚腫瘍と正常組織の境を認識して、過不足
    なく腫瘍を摘出します。

    若い先生がたは、メスで摘出する習慣を持っていただきたい。
    悪い癖は生涯残ってしまいます。

    手術がうまくなりたいならば、うまい先生の手術を見て、英文論文で術式を
    学ぶことをお勧めします。

    脂肪腫は、指もしくは筋鈎での鈍的剥離が手術最大のポイントです。

    脂肪腫の底面と筋膜の境界部の止血も、ポイントの一つです。

     

    脂肪腫が大きくなるほど、dead space(死腔)も大きくなり、それに比例
    して、皮下血腫のリスクが高まります。

    止血操作はしつこいくらい行ってください。

    摘出します。大きな脂肪腫に、娘脂肪腫がくっついています。
    親子脂肪腫でした(勝手に命名)。

     

    検体です。きれいに全摘しました。病理組織検査の結果は脂肪腫です。
    病理組織検査は必ず提出しましょう。

     

    少し盛り上がるように吸収糸(この症例は4-0 PDS)で真皮縫合します。
    今回はドレーンは留置しませんでした。

     

    最初は、切開線を小さくすることにとらわれず、脂肪腫の大きさに合わせて切開
    すると、腫瘍が取りやすいです。

    指での鈍的剥離が、うまくできるようになった時点で、切開創を少しずつ小さくする
    のがよいと思います。

    がんばってください。

    第29回日本皮膚外科学会は和歌山で開催されます(平成26年9月13~14日)。
    和歌山県立医科大学(会頭 山本有紀先生)が事務局です。

    全国の若き皮膚外科医よ、和歌山で会いましょう!

  • 基底細胞癌 

    2013-11-14 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    私のブログは、多くのドクターも読まれているようなので、
    若い皮膚科医へ、愛とメッセージをこめて。

    今年(平成25年)10月に経験した症例です。

    51歳の男性です。右内眼角の黒色結節が主訴です。

     

    この黒い結節は20年以上前からあるそうです。
    少しずつ大きくなり、最近では出血するようになりました。

    テレビで皮膚癌の特集を見て、心配になり受診されました。

    肉眼で見ても、結節の辺縁がデコボコとして気味が悪い。

    ダーモスコピー所見です。

     

    この結節を覆う、白っぽい薄霞のような構造がくせものです。
    whitish veil の所見です。悪性黒色腫や基底細胞癌でよく見られます。

    臨床とあわせて基底細胞癌を強く疑います。皮膚生検で確定診断しました。

    充実型の基底細胞癌(BCC)の病理組織像です。

     

    基底細胞癌は顔面に生じることが多く、切除と再建の両方が大切です。

    ①癌なので完全に摘出します。
    ②顔なので、なるべく傷が目立たなくなるように工夫します。

    切除して、耳前からの全層植皮も一つの方法です。
    しかし、植皮は植皮です。ツギハギと皮膚の質感の違いが生涯残ります。

    植皮は最終手段です。
    皮弁で再建したほうが、創は目立たなくなります。

    OSS(Oblique sigmoid) flap、Limberg flap の二者を考えました。

    眉間のしわを応用できそうなLimberg flap を選択しました。
    点線は眉間のたてジワです。

     

    まずは完全切除です。黒ナイロン糸で検体の方向が分かる
    ようにします。病理組織検査所見を見るときに役立ちます。

     

    生検での病理組織像を参考に、切除する深さを見極めます。

    病理で癌細胞は脂肪組織まで達していません。筋膜上で切除すれば
    十分に取り切れると考えました。

    手術前のプランから勝負は始まっています。

    剪刃で切除するより、メスで組織の抵抗を指先に感じながら切除した
    ほうが、正確に病変を切除することができます。筋膜が露出しています。

     

    切除中に指で検体の裏面を触り、硬く触れないことを確認することも
    重要な操作です。

    切除しました。この検体を病理組織検査に提出します。

     

    検体の裏面です。黒く透けていません。問題なく取りきれていることが分かります。
    癌組織が厚い脂肪組織でカバーされているからです。

     

    切除部を皮弁で再建します。吸収糸(5-0 PDS)で皮弁のポイントを
    中縫いします。皮弁の色に気を使います。

     

    ドッグイヤーなどあまった部分を切りながら、6-0 黒ナイロンで
    皮膚縫合します。

     

    話が変わりますが、

    驚くくらい大きく病変を切除して、前額正中皮弁で再建する症例発表を学会で
    見ることがあります。

    そうした症例は、皮膚科医が切除にも立ち会わず、最初から形成外科に丸投げ
    するケースに多い気がします。

    基底細胞癌のタイプを正確に診断して、必要最小限に病変を切除、より侵襲が
    少ない再建法を選択することが本道です。

     

    病理組織のプレパラート標本です。糸でマーキングすることで、切除断端が陽性
    (取り残しあり)だった場合、陽性部分がどこかが分かります。

     

    病理組織検査の弱拡大像です。青紫に見える塊が基底細胞癌です。
    水平方向、垂直方向とも完全に取り切れています。

     

    現在は皮弁のtrap door deformity を予防するため、レストン(スポンジ)で圧迫しています。
    半年もすれば、創はかなり目立たなくなります。

    基本的には、皮膚癌治療は個人クリニックではなく大学病院レベルで行ったほうが
    よいでしょう。

    ときどき、強いご指名を受けたり、知り合いの先生からご紹介があるので執刀している
    というのが現実です。指名料いただきますよ(笑)。

    今回のブログは、これから皮膚外科を始める若き皮膚科医へのメッセージです。
    大きなお世話かな(笑)。

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