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診療だより

診療だよりの記事一覧

  • Qスイッチレーザー 『不都合な真実』

    2010-05-27 UP!     カテゴリー:しみ(ルビーレーザー), 診療だより

    レーザー治療に関わり始めたのは虎の門病院皮膚科に国内留学したのがきっかけです。
    それから10年以上が経過しました。
     
    その頃の虎の門病院には赤アザ用のダイレーザー、シミ用のルビーレーザー、Qスイッチ
    アレキサンドライトレーザー、YAGレーザーがありました。
     
    このブログで何度も書いていますが、虎の門病院の大原国章先生の臨床能力はとてつも
    なく凄いです。手術以外にレーザー治療でも多くを学ばせてもらいまいした。
     
    レーザー治療の中で強く感じたことがありました。
    「太田母斑のようなアザ治療はアレキサンドライトレーザーも効果があるが、シミ(老人性色素斑)は
    アレキサンドライトレーザーよりもルビーレーザーのほうが効果が高い」。

     
    このことは虎の門から名古屋大学皮膚科に帰局した後もずっと頭にこびりついていました。
     
    大学にいる8年間、名東区の病院で週に一回、皮膚科の外来をしていました。
    その病院にはQーアレキサンドライトレーザーがありました。
     
    個人病院です。レーザー治療の対象はシミがほとんどです。
    シミ治療は自費診療ですから金額も数万円単位と高額になります。
     
    当然、患者さんはシミが跡形も無くきれいに取れると信じています。
    治療結果は? よい結果もあり、よくない結果もある。
     
    患者さんへ対応が大変でした。「必ずきれいにとれる保障はないですけどいいですね」と
    何回も説得して承諾書まで渡してレーザー治療していました。
     
    美容先進国アメリカではQ-YAGレーザー、アレキサンドライトレーザーはタトーレーザーとして
    位置づけられていると知り合いの美容外科医から聞きました。
     
    そうです。タトー(tattoo)刺青を治療するレーザーなのです。
    たしかにQ-YAG(532nm)は赤色の刺青(いれずみ)を消すには必須です。
     
    レーザーにはそれぞれの役割があるのです。
     
    問い合わせの多いADM(両側性遅発性太田母斑様色素斑)について再考。
     
    週に2人くらいの割合で外来初診で見かけます。想像以上に多いので驚いています。
    開業する以前の私は鑑別ができていなかったのでしょう。 やぶでした、以前は。
     
    なかにはエステに通って治療を受けている人がいます。
    エステではADMはいくらお金をかけても絶対に改善しません。私が保障します。
     
    Qスイッチレーザーしか効果がないのが医学的事実です。
     
    ではQスイッチレーザーの中でどれが最も有効か?
    葛西健一郎先生の名著「シミの治療」より抜粋します。
     
    ADMの効果について点数がかかれています。
    ルビー 95点、アレキサンドライト 70点、YAG 60点 となっています。
     
    波長はルビー 694nm、アレキサンドライト 755nm、YAG 1064nm です。
    メラニンに最も吸収がよいのはルビーの694nm、深くまで進むのは波長が長いYAGの1064nmです。
     
    ADMは太田母斑にくらべれば真皮に増生したメラノサイトは浅いところにあります。
    だからこそ太田母斑のように青くはなく、灰色~褐色を呈するのです。

    「An Atlas of Surface Microscopy of Pigmented Skin Lesions」  より引用
     
    私が言いたいこと。
    ADMの治療で大切なのは波長+レーザーの照射時間ではないでしょうか?
     
    Qスイッチレーザーの照射時間は、
    ルビーが20ns、アレキサンドライトが50-100ns、YAGが10nsです。
     
    葛西先生はルビーの波長694nm 照射時間 20nsが真皮メラノサイトを破壊するのにちょうどよいのでは
    ないかと推測しています。
     
    真皮浅層で増生したメラノサイトをいかにたたくか。これが治療の鍵でしょう。
     
    また話がずれます。
    ADM、太田母斑にアレキサンドライトレーザーはそこそこ効果があります。
     
    シミにはダントツでルビーが効きます。
     
    知り合いの多くの形成外科医が同意しています。
    日本では皮膚科医よりも形成外科の先生がレーザー治療を積極的に行う傾向があります。
     
    私の8年間のアレキサンドライトレーザーの治療経験、クリニックを開院してからの
    トライバンテージ(Q&マイクロセカンドのアレキサンドライトレーザーとQ-YAGレーザーの
    複合機)、メドライトC6(Q-YAGレーザー)の治療経験に裏打ちされた事実です。
     
    私は自分の目で見た結果しか信用しません。
     
    シミ治療の切れ味は機種ではなく、出力の問題に過ぎないと言われる先生もいるようです。
    複数のQスイッチレーザーでの治療経験が少ないように思われます。
     
    レーザー治療は理論が先行しますが、治療結果とギャップがあるのが普通です。
     
    フォトRF治療のSRからSRAハンドピースの開発、フラクセルレーザーの進化などは
    そのことを如実に物語っています。
     
    ADMにルビーとYAGのどちらがより有効か?
    私には断言するだけのYAGレーザーでのADM治療経験がありません。
     
    以前にもこのブログに登場した患者さんを再度提示します。
    頬部に小斑状の灰褐色斑があり、典型的なADMの皮疹です。

     
    ルビーレーザーを1回照射して1年間がたちました。
    治療は1回だけです。


     
    1回の治療でここまで改善したらまずまずではないでしょうか。
    ADMの治療にはQスイッチルビーレーザーが優れています。

  • たかが粉瘤、されど粉瘤 season 3

    2010-05-24 UP!     カテゴリー:粉瘤, 診療だより

    耳の粉瘤はちょっと苦手です。
     
    耳垂部の表裏に癒着していることが多く、くりぬき法よりメスで摘出したほうが無難です。
     
    手術はこんな感じです。メスで耳垂の縦方向に切開します(右耳の裏側です)。

     
    ルーペで確認しながら慎重に切除します。右第5指がポイントかも。

     
    指を上手く使うといいですね。取り残しは絶対だめ!!
    この指の使い方は眼瞼下垂手術にも生きてくるのですよ。

     
    取れました。割と大きかったです。

     
    病理組織検査で確認しましょう。

     
    きれいに取れましたね。 プロフェッショナルですから。
     
    でも耳の粉瘤はちょっと苦手かも・・・。
     
    【大切なお知らせ】
    諸般の事情により耳の粉瘤手術は現在当院でおこなっていません。
    お近くの総合病院皮膚科もしくは形成外科を受診してください。

  • Q スイッチルビーレーザー 【知る悲しみ】

    2010-05-13 UP!     カテゴリー:しみ(ルビーレーザー), 診療だより

    開高 健先生の言葉を引用します。
     
    「いい物を手にすると大きな悲しみも待っている。いわゆる知る悲しみだ」
    「いったん知ってしまえば知らなかったときには戻れない」

     
    さすが開高文豪、心に響く言葉です。
     
    しみ治療にあたり、ルビー、YAG、アレキサンドライトの3つのレーザーを試しました。
    始めはメンテナンス費の安いQ-YAGレーザーが購入候補でした。
     
    しかし、切れ味が違うのですよ、ルビーは。
     
    美容外科で照射された例のひと。

     
    レーザーは効かないと半信半疑。説得して一つ照射。

     
    信頼を勝ち得たところで、残りを照射。
    しみが痂皮となってぺろりと取れるこの瞬間が私は好きです。

     
    まだちょっと赤いです。遮光しっかりしてくださいね。

     
    お化粧が楽しくなったと。よかったです。もっとなじみますよ。

     
    Qスイッチルビーレーザーは大変デリケートな機械です。
    年に4回ほどメンテナンスを受けます。年間100万円近くのランニングコストがかかります。
     

    最初はQ-YAGレーザーを購入してお茶を濁そうと思いました。
    肝斑にはYAGの空中照射ですよ~、なんて商売っ気をだして稼ごうかとも思いました。
     
    でもルビーの切れ味を知ってしまうと・・・。
     
    知る悲しみです。
    この機械、金かかんな~、と悲しい時もあります。
     
    そんな時は文豪の言葉で慰められます。
    「知らない悲しみよりも知る悲しみのある人生のほうが高級だ」。

  • 粉瘤 くりぬき法 season 4

    2010-05-05 UP!     カテゴリー:粉瘤, 診療だより

    研究会後の懇親会の場などで皮膚科の先生からくりぬき法についてよく質問されます。
    また、くりぬき法の治療のために東京、関西方面からも患者さんが来られます。
     
    交通費のほうが治療費より高くなってしまいます。もったいないです。
     
    ちょっとしたコツさえつかめばくりぬき法は簡単です。
    手順を再度供覧します。
     
    頚部の粉瘤です。真下を頚動脈が走行しています。

     
    エコーで血管との位置関係を確認します。エコーは必ずしも必要ではありません。

     
    4mmトレパンで真皮のみを切開します。ずぼっと切開しなければ下の動脈を損傷させることは絶対にありません。 内容物を可能な限り出し切ります。

     
    モスキートで嚢腫壁を保持して、曲がりの眼科剪刃で嚢腫壁の周囲をひたすら剥離します。

     
    剥離を続けると必ず壁が周囲の結合組織から剥がれてきます。あと一息です。

     
    嚢腫壁の底を確認して周囲の結合組織から切り離します。ここがポイントです。
    嚢腫壁を取り残したら再発してしまいます。
    下の写真で剪刃の上が嚢腫壁の底です。剪刃の下が結合組織です。
    嚢腫壁は白~灰~青色、結合組織は白色をおびた半透明色です。

     
    嚢腫(粉瘤)がきれいに摘出されました。

     
    粉瘤の手術治療でくりぬき法がベストというわけではありません。
    しかし、顔面、頚部ではこのやり方のほうが手術跡が目立ちません。
     
    自分が受けたいと思う治療を患者さんに提供する。私の治療理念です。
    相変わらず生意気でごめんなさい。
     
     
    【大切なお知らせ】
    化膿したことがある粉瘤はくりぬき法はできません。
    粉瘤の袋が周囲組織と癒着してしまうからです。メスでの切除しかできません。
     
    耳の粉瘤もくりぬき法は不適です。
     
    また、現在粉瘤が化膿して赤く腫れている状態なら、お近くの皮膚科で切開排膿処置を
    受けてください。その状態で当院を受診されても手術はできません。
    地元の皮膚科で切開してもらい、化膿が落ち着いた後紹介状を持参して来院してください。

  • 真っ当なホクロ治療

    2010-04-29 UP!     カテゴリー:ほくろ, 診療だより

    ホクロの治療は奥が深いです。
     
    ホクロの治療で美容外科医の実力が分かるのでは?
    単純な治療だからこそ技量が出やすいのだと思います。
     
    「それはちょっとな~」と思った患者さんを提示します。
     
    高校生の頃にチェーン(全国展開)美容外科でホクロ治療をうけたそうです。
    治療した周囲に色素斑が残っています。治療範囲が狭すぎるのです。

     
    ダーモスコピーです。中央部は白く瘢痕となっています。

     
    反対の頬部にもホクロ治療の取り残しがあります。
    中央部がえぐれて周囲には色素斑が残っています。雑な治療ですね。

     
    ダーモスコピーです。

     
     
    違う有名チェーン美容外科でホクロ治療を受けた別の患者さんです。
    えぐれてクレータ状になっています。

     
    凹ましたらダメなのです。
    もとには戻りません。2~3回治療してもよいから凹まさずにに治すのがプロです。
     
    一般的にホクロ治療は炭酸ガスレーザーを用います。
    もちろん私も使用しています。
     
    焼灼モードは熱ダメージの少ないSP(スーパーパルス)モードを選択します。

     
     
    葛西健一郎先生の書かれた「炭酸ガスレーザー治療入門」から引用しました。
    ホクロは浅く広く焼灼するのが基本です。下の図なら bではなく cが正解です。

     
    葛西形成外科にてホクロの炭酸ガスレーザー治療を見学する機会に恵まれました。
    山村有美先生の炭酸ガスレーザー焼灼は素晴らしかったですよ。
    フットスイッチを足で小刻みに踏んでリズミカルに焼灼していました。
     
    炭酸ガスレーザーは足で打つ!
     
    私は患者さんに必ず言います。
    「ホクロは浅い(薄い)のは1回、深い(濃くて隆起)ものは2~3回かけて治します」
     
    SSクリニックを受診した患者さんです。

     
    広く浅く焼灼します。焼灼直後の写真です。これでいいのです。
    このタイプの単純黒子なら1回の焼灼で取れるでしょう。

     
    ホクロ治療は凹ましたら負けです。
     
     

    参考文献
    炭酸ガスレーザー治療入門 文光堂 葛西健一郎、酒井めぐみ、山村有美

  • 眼瞼下垂手術 ー修正術を振り返ってー

    2010-04-22 UP!     カテゴリー:眼瞼下垂, 診療だより

    たて続けに眼瞼下垂の修正術を行いました。
     
    思うところがあります。
     
    下の症例は眼科の先生より紹介を受けた症例です。
    3年前に某総合病院の眼科で眼瞼下垂手術を受けられました。
     
    術後の腫脹が3年経過しても取れず、睫毛内反を併発して眼球の痛みに苦しんでおられました。
    眼瞼下垂の過矯正が原因です。修正術を行いました。
     
    切開して固定された糸を探します。

     
    糸を3本抜糸しました。

     
    ここからが問題です。
    糸を外しても過矯正された挙筋腱膜が元に戻らないのです。
    眼科の手術では挙筋腱膜を瞼板から剥離するので下床と強く癒着してしまうのです。
     
    なんとか挙筋腱膜を剥離して過矯正を解除しました。

     
    術後、眼瞼の腫脹と過矯正さらには睫毛内反は治りました。
    患者さんからは感謝されましたが手術は大変でした(修正術なので自費診療です)。
     
    久保田伸枝先生の書かれた「眼瞼下垂」文光堂から引用します。
    やはり挙筋腱膜を瞼板から剥がし、再固定する術式が書かれています。

     
     
    次は私が執刀した眼瞼下垂手術の修正術です。
     
    術後の経過はよかったのですが、寝ているときに子供が顔につっこんできてから左眼が
    下がってきたとのことです。糸が外れてしまった可能性があります。
     
    切開したところ、内側の糸が緩くなっていました。このようなケースは初めてです。

     
    糸を外して挙筋腱膜を前転します。
    挙筋腱膜が瞼板と癒着していないので前転はスムーズに行えます。

     
    右眼に合わせてプロリン糸で再固定して手術は終了です。

     
    経過はとてもいいですよ。
     
    信州大学形成外科方式の眼瞼下垂手術は挙筋腱膜の癒着が少ないため修正術」が比較的容易です。
     
    信州大学形成外科方式は理論・術式とも素晴らしい手術です。
    この術式が眼瞼下垂手術のスタンダードなものになるとよいですね。

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☆…手術/レーザー治療(フォトRFなど)/ヒアルロン酸/ボトックス治療など

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