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診療だより

診療だよりの記事一覧

  • 皮膚科医が行うフォトRF治療 

    2010-04-15 UP!     カテゴリー:しみ フォトRF, 診療だより

    彼女のしみの診断は?
     

     
    鼻にも色素斑があることより、主体は肝斑よりは雀卵斑と日光黒子(老人性色素斑)が
    混在したものでしょう。鼻に病変があるかどうかは診断にとても大切なポイントです。
     
    右外眼角部の外側には大きな日光黒子もあります。頬部には毛細血管拡張も見られます。

     
    実は数ヶ月前にQスイッチルビーレーザーを照射しているのです。取り残しです。
    カルテを見ると4J での照射となっています。照射パワーが低すぎましたね。
     
    日ごろブログで大きなことを言っている割にはお粗末です。反省しています。
     
    炎症後色素沈着はいづれ消退するのですから気にすることはない。
    むしろ照射パワーが低すぎることに気をつけないとダメですね。学びました。
     
    話を変えます。
    この方の頬部全体にシミにはフォトRF治療がいいと思います。
    色白な方です。いきなりSRA で照射してもよいでしょう。
     
    SRA 照射終了時の写真です。
    シミの周囲が赤くなっているのが分かりますか? この紅斑反応がすごく大切なのです。
    白く囲んである部分は肝斑を疑った部分です。さすがにこの部分には照射を控えます。

     
    フォトRF治療はダウンタイムが少ない治療とされています。
    結論から言えばダウンタイムがゼロで効果がでるシミ治療は存在しません。
     
    フォトRF治療でもシミを薄くするにはmicro crust と呼ばれる微小な痂皮を生じさせることが必要です。micro crust を生じるかどうかは照射後の紅斑反応の有無と相関しています。
     
    私はこの紅斑反応を目安に照射モードを設定します。
    SRAのいやらしい点はこの紅斑反応が照射して数分経過してから出現するところです。
    レーザーマニュアルには記載されていません。すべて臨床実地より学びました。
     
    私はシミに一発照射して数分待ちます。とても大切なポイントです。
     
    SRA照射1週間後です。micro crust がかなり取れてきました。
    ほどよく照射すれば1回の照射でもこのくらいまでシミは薄くなります。

     
    フォトRF治療は最適な照射条件の選択が大切です。それが医師の仕事です。

  • 進化するフォトRF治療

    2010-04-08 UP!     カテゴリー:しみ フォトRF, 診療だより

    一つの医療機器を使いこなすには2年かかるな、というのが現在の実感です。
    単に私がおバカなだけかもしれませんが・・・。
     
    平成20年5月の開院時よりフォトRF治療を取り入れていました。
    最初はメーカーさんから送られる資料を参考に照射していましたが、満足のいく結果が
    得られないこともありました。悩みました。
     
    日々の照射、その治療結果からのフィードバックを経て、ようやく自信を持てる治療レベルに近づきました。
     
    ここまで2年かかりました。
     
    治療例を参照に私が行うフォトRF治療の変遷、考え方について述べたいと思います。
     
    下の写真は赤ら顔を主訴に受診された方です。

     
    フォトRF治療にはSR とSRA の2つのハンドピースがあります。
    赤ら顔には470~980nm とヘモグロビンへの吸収が高い波長を含むSRA を選択します。

     
    施術1週間後です。本人は「赤ら顔にいいですよ。頬部にハリも出ますね~」とご満悦です。
     
    本題はここからです。
    両頬部に細かい痂皮(micro crust)が出現しているのが分かりますか?

     
    右頬部のアップです。シミの一部に細かい痂皮が出ています。

     
    左側の頬部のアップです。

     
    1ヵ月後です。写真では分かりにくいですが、ほくろは残っていますが頬部のシミが少しだけ
    薄くなっています。
     
     
    もしもこの方の主訴が赤ら顔ではなく、頬部のシミ、くすみだったらどうでしょう?
    私も1回目の照射は標準ハンドピースのSR を選んでいたでしょう。
     
    おそらくこの方はSR で5回照射してもシミの改善は出なかったと思います。
    どんなに照射パワーを上げてもSR では効果が出にくい症例は存在するのです。
     
    思うに、2回治療して効果がない治療は10回治療しても効果がでないのではないでしょうか?
     
    ハンドピースのSR とSRA の違いはなんでしょうか?
    メーカーのカタログからの抜粋です。
    SR   波長 580~980nm、照射時間 ~25ms
    SRA 波長 470~980nm、照射時間 ~13ms

     
    どちらもメラニンに対する波長を持っています。
    シミ治療においては波長以外に照射時間が大きなファクターになっています。
    日本人のしみ治療に25ms という照射時間は長すぎるのかもしれません。
     
    SR にはそのよさもあります。
    日に焼けた人、雀卵斑(ソバカス)の1回目にはSRA は反応が強すぎて使いづらいです。
     
    色白の人のしみ・雀卵斑治療、よそのクリニックで何回も照射を受けた方は1回目からSRAを私は照射します。それでないと効果が出ないのです。
     
    私には標準ハンドピースのSR のみでシミ治療の効果を出す自信がありません。
    SR(Skin Renewal) SRA(Skin Renewal Advance) の2本のハンドピースがあってこそ
    満足のいくフォトRF治療が可能と私は考えています。

     
    治療歴、スキンタイプを考慮してSR とSRA を適切に使い分ける。

    2~3回で治療効果を出す(インターバルは3~4週間)。そして年に1~2回程度のメンテナンス照射を行い効果を持続させる。
     
    2年間のフォトRF照射の経験からこのよのうな結論となりました。
    もちろん私の個人的な考えに過ぎません。

  • 脂肪腫 season 3 DEEP なやつ

    2010-03-25 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    前額の脂肪腫は深いです。
     
    なぜか前頭筋の下で前頭骨の骨膜に接して局在しています。
     
    おでこの脂肪腫摘出にはちょっとしたコツがあります。
    それほど大したものではありませんが。
     
    素敵なミセスの左前額のしこりです。こりこりとして気になるようです。

     
    まずは皮膚エコーですね。
    脂肪腫は粉瘤と比べると内部エコーが高いです。骨膜の上にmassが局在しています。

     
    ここで「皮膚科診療プラクティス4 Day Surgery」分光堂から引用します。
     
    前額のシワの方向(横方向)に沿ってメスをいれます。

    前頭筋は縦方向に走行しているので、縦に筋層を切開します。

     
    実際の手術写真です。脂肪腫に下から押されて前頭筋が膨れています。

     

    縦に切開した前頭筋の間から脂肪腫を引きずり出します。骨膜からていねいに剥離するのがコツです。

     
    摘出した脂肪腫です。

     
    吸収糸で筋層を縫合、真皮縫合します。

     
    術後13日目です。
    左前額のキズがわかりますか?まだちょっと赤いですね。
    もう少し時間がたてばほとんど目立たなくなると思います。

     
    脂肪腫はキズが小さくなるようにsqueeze法(もみ出し)で摘出したいのですが。
    前額の脂肪腫は筋層の下で骨膜とがっちりと癒着しているのでsqueeze法は無理です。
    内視鏡で摘出する方法を形成外科の雑誌で読んだことがあります。
    そこまではちょっとね・・・。
     
    参考文献
    「皮膚科診療プラクティス4 Day Surgery の実際」分光堂 p.275
    23. 脂肪腫 田村敦志

  • 腱膜性眼瞼下垂症 -Sunken eyes-

    2010-03-18 UP!     カテゴリー:眼瞼下垂, 診療だより

    Sunken eyes とは何でしょうか?
     
    動詞 sink (沈む、くぼむ)の過去分詞が sunkenです。
    イギリス英語では sunken を形容詞としても用いるようです。
     
    sunken eyes  くぼんだ目という意味でしょうか。
     
    腱膜性眼瞼下垂症の患者さんにはsunken eyesを呈している人が多いのです。
     
    下の絵は腱膜性眼瞼下垂症の解剖です。
    挙筋腱膜が瞼板からゆるんだり、はずれることで眼瞼下垂が生じます。
     
    眼窩脂肪を被う眼窩隔膜と挙筋筋膜はくっついているため、腱膜性眼瞼下垂症では
    眼窩脂肪も眼の奥に引き込まれていきます。これがsunken eyesの原因です。

     
    最近、私が執刀した腱膜性眼瞼下垂症の症例を提示します。
     
    54歳の女性です。眼の開けづらさ、頭痛、左眼の奥の痛みを主訴に来院されました。
    上眼瞼のくぼみが著明ですね。

     
    電子カルテから拝借します。MRD が右1mm、左0.5mmと重症な眼瞼下垂症です。

     
     
    右上眼瞼の挙筋腱膜を前転したところです。上のほうに黄色い眼窩脂肪が見えます。
    sunken eyesの強い症例では皮膚縫合の際にこの眼窩脂肪にも糸をかけるのがコツです。

     
    術後1ヶ月半の写真です。
    眼の開けづらさはもうありません。頭痛、眼の奥の痛みも消退しました。
    sunken eyesも著明に改善しているのが分かりますね。

     
    54歳、人生もう一花咲かせられそうですね。
     
    腱膜性眼瞼下垂症の手術は眼のあけづらさを解消する機能を目的とした手術です。
    しかし、結果として上眼瞼の若さも得られることが多いのです。
     
    まさに機能美の追求でもあります。
     
    追記
    遺伝的に上眼瞼のくぼみが強い人もいます。脂肪注入などもよいと思います。
    残念ですが私は脂肪注入を行っていません。
     
    脂肪注入を希望のかたには岐阜市にある「市田クリニック」さんを紹介しています。
    院長の市田正成先生の技量はとても素晴らしいです。

  • 進化する多血小板血漿療法

    2010-03-11 UP!     カテゴリー:W-PRP, 診療だより

    多血小板血漿療法(W-PRP)とは何ぞや?
     
    採血した血液から白血球、血小板を分離し、それに細胞成長因子を添加してシワに注入
    する治療です。
     
    頬部の施術例を提示してこの治療に対する印象を述べます。
    最後までお付き合い下さい(笑)。
     
    54歳の女性です。頬部のたるみと小じわを気にされて来院されました。
    ほうれい線が目立ちますね。ほうれい線の外側に放射状に伸びる小じわが見えますか?

     
    ほうれい線にヒアルロン酸を注入するのもありです。
    今回は頬部の小じわも治療したいのでW-PRP療法を選択しました。
     
    ほうれい線には細胞成長因子を添加することがあります。
    ヒアルロン酸と違い、皮下に注入するのがコツです。

     
    放射状の小じわには真皮内にメソセラピーの要領で点状に注入します。

     
    マッサージしてほどよくならします。このマッサージが重要です。

     
    さあ2週間後の写真です。最初の写真と比べてください。
    ほうれい線がずいぶんと浅くなりましたね。ヒアルロン酸注入と比べると注入部を触れた
    感じがとてもナチュラルです。放射状のしわはあと一歩といったところでしょうか。

     
    顔全体をお出しできないのが残念です。
    初診の時と比べると顔全体の印象が変わりましたよ。顔全体にハリがでた感じです。
     
    通常は1ヵ月後くらいより効果が出始め、3ヶ月くらいで仕上がります。
    この方は割りと早く効果がでました。
     
    これから頬部の放射状のシワにも効果が出てくるといいですね。

  • マスターたちとの日々 その4

    2010-03-05 UP!     カテゴリー:しみ(ルビーレーザー), 診療だより

    葛西形成外科さん(大阪)を訪れる機会に恵まれました。
    葛西健一郎先生は日本で有数のレーザーの大家です。
     
    葛西先生のことを知ったのは書籍「皮膚科診療プラクティス 17 Rejuvenationの実際」文光堂が
    きっかけです。この本は葛西先生がゲスト編集でした。

     
    その頃はまだ勤務医でしたが美容皮膚科とはなんぞや、との問いかけに惹かれたのを覚えています。
    続いて購入した「シミの治療」文光堂はさらに衝撃的でした。
     
    シミとはなんぞや? 正しい治療とは何か?
    葛西先生の長年にわたる経験に裏打ちされた理論に衝撃を受けたのを覚えています。
     
    クリニックを臨時休診して葛西形成外科さんに行ってきました。
     
    日常診療で疑問に思っていることはたくさんあります。
     
    ●Qスイッチレーザー後のテープは10日間がベストなのか?
    ●Qスイッチレーザー照射後の炎症後色素沈着、消退しないものもあるのか?
    ●Qスイッチレーザー照射後に残った老人性色素斑の再照射はいつが適切か?
    ●ADMの本当の最適照射モードは何なのか?
    ●Qスイッチレーザー、ルビーとYAGの使い分けはなにか?
    ●Qスイッチレーザー照射後のハイドロキノン軟膏の外用は本当に意味があるのか?
    などなど。
     
    全てに満足のいく答えを頂くことができました。
    2日間でしたが間違いなく私のレーザー治療は深まりました。
     
    左から山村先生、葛西先生、しんちゃん先生です。

     
    葛西先生の外来、治療を見させてもらいました。
     
    1歳児の顔半分に及ぶ先天性母斑のレーザー治療。
    すごかったですよ。この治療をやりぬく葛西先生の覚悟を肌で感じました。
    「オレにしかできないんだ」という熱いパッションがびんびん伝わってきました。
     
    こちらの心も揺さぶられましたね。
    この患者さんのためにQスイッチレーザーのハンドピースを特注であしらえる程です。
     
    常人にはできませんよ。本気の覚悟です。
     
    葛西先生はしみ・あざ治療で有名ですが、手術も素晴らしかったです。
    この日は腋臭症の手術を見学しましたが、片側でわずか20分でした。
     
    縫合のコツも興味深かったです。
    ある意味、葛西先生は天才的な先生です。ちょっと真似はできませんね。
     
    閑話休題。
    私がレーザー治療のバイブルとしている「しみの治療」にサインを頂きました。
    この本は最低でも20回は読まないとダメですよ。

     
    内容の関係上、ブログでは書けないこともたくさんあります。
    私が心に残った葛西先生語録を少しだけ書きますね。
     
    「相関関係と因果関係の混同」
    「real と illusion」
    「迷ったら強く照射する!」

    「赤みは2種類ある。紅斑症と毛細血管拡張症である。紅斑症には炎症が伴っている。」
     
    ●ハイドロキノン軟膏の外用で炎症後色素沈着が軽減したのではなく、外用に伴う遮光、患部の丁寧な手当てが
    炎症後色素沈着を軽減させている可能性がある。相関関係と因果関係を混同してはいけない。
     
    ●Qスイッチレーザー、炭酸ガスレーザー、脱毛レーザーはreal な治療である。結果が写真で分かるから。
    サーマクール、フラクセルレーザーはillusion(幻想的) な治療である。結果が写真に現われないから。
     
    ●炎症が原因の紅斑症(例えば酒さ)の治療は炎症を抑えること。
    フラッシュランプ治療は炎症がない器質的疾患にのみ有効である。
     
    これ以上書くと、レーザーメーカーからクレームがきそうなのでもう止めますね。
     
    この治療がどうして効いたのか、または効かなかったのか?
    臨床結果からフィードバックして理論を構築する。
     
    レーザーメーカーの言うことを鵜呑みにしているような先生はちょっと反省したほうがよいですね。
    当たり前ですがレーザーメーカーは一台でも多く売ることが最優先目的です。
     
     
    この症例覚えていますか?

     
    notoriousな某美容クリニックでレーザー照射を受けた患者さんです。
    以前にもこのブログに登場しました。
     
    今の私なら全て分かります。
    このしみは炎症後色素沈着ではなく、照射の誤りである!!

     
    このまだらな色調は照射パワーが不十分です。低すぎるのです。
    またまだらになっているところを見ると、照射にムラがありかなり雑です。
    ビームプロファイルが一定でなく、粗悪なレーザーで照射を受けている可能性があります。
     
    レーザー治療もすべては理論なのです。
     
    そのことを葛西先生から教えて頂きました。

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