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Q スイッチルビーレーザー 【知る悲しみ】
2010-05-13 UP! カテゴリー:しみ(ルビーレーザー), 診療だより
開高 健先生の言葉を引用します。
「いい物を手にすると大きな悲しみも待っている。いわゆる知る悲しみだ」
「いったん知ってしまえば知らなかったときには戻れない」
さすが開高文豪、心に響く言葉です。
しみ治療にあたり、ルビー、YAG、アレキサンドライトの3つのレーザーを試しました。
始めはメンテナンス費の安いQ-YAGレーザーが購入候補でした。
しかし、切れ味が違うのですよ、ルビーは。
美容外科で照射された例のひと。
レーザーは効かないと半信半疑。説得して一つ照射。
信頼を勝ち得たところで、残りを照射。
しみが痂皮となってぺろりと取れるこの瞬間が私は好きです。
まだちょっと赤いです。遮光しっかりしてくださいね。
お化粧が楽しくなったと。よかったです。もっとなじみますよ。
Qスイッチルビーレーザーは大変デリケートな機械です。
年に4回ほどメンテナンスを受けます。年間100万円近くのランニングコストがかかります。
最初はQ-YAGレーザーを購入してお茶を濁そうと思いました。
肝斑にはYAGの空中照射ですよ~、なんて商売っ気をだして稼ごうかとも思いました。
でもルビーの切れ味を知ってしまうと・・・。
知る悲しみです。
この機械、金かかんな~、と悲しい時もあります。
そんな時は文豪の言葉で慰められます。
「知らない悲しみよりも知る悲しみのある人生のほうが高級だ」。 -
粉瘤 くりぬき法 season 4
2010-05-05 UP! カテゴリー:粉瘤, 診療だより
研究会後の懇親会の場などで皮膚科の先生からくりぬき法についてよく質問されます。
また、くりぬき法の治療のために東京、関西方面からも患者さんが来られます。
交通費のほうが治療費より高くなってしまいます。もったいないです。
ちょっとしたコツさえつかめばくりぬき法は簡単です。
手順を再度供覧します。
頚部の粉瘤です。真下を頚動脈が走行しています。
エコーで血管との位置関係を確認します。エコーは必ずしも必要ではありません。
4mmトレパンで真皮のみを切開します。ずぼっと切開しなければ下の動脈を損傷させることは絶対にありません。 内容物を可能な限り出し切ります。
モスキートで嚢腫壁を保持して、曲がりの眼科剪刃で嚢腫壁の周囲をひたすら剥離します。
剥離を続けると必ず壁が周囲の結合組織から剥がれてきます。あと一息です。
嚢腫壁の底を確認して周囲の結合組織から切り離します。ここがポイントです。
嚢腫壁を取り残したら再発してしまいます。
下の写真で剪刃の上が嚢腫壁の底です。剪刃の下が結合組織です。
嚢腫壁は白~灰~青色、結合組織は白色をおびた半透明色です。
嚢腫(粉瘤)がきれいに摘出されました。
粉瘤の手術治療でくりぬき法がベストというわけではありません。
しかし、顔面、頚部ではこのやり方のほうが手術跡が目立ちません。
自分が受けたいと思う治療を患者さんに提供する。私の治療理念です。
相変わらず生意気でごめんなさい。
【大切なお知らせ】
化膿したことがある粉瘤はくりぬき法はできません。
粉瘤の袋が周囲組織と癒着してしまうからです。メスでの切除しかできません。
耳の粉瘤もくりぬき法は不適です。
また、現在粉瘤が化膿して赤く腫れている状態なら、お近くの皮膚科で切開排膿処置を
受けてください。その状態で当院を受診されても手術はできません。
地元の皮膚科で切開してもらい、化膿が落ち着いた後紹介状を持参して来院してください。 -
真っ当なホクロ治療
2010-04-29 UP! カテゴリー:ほくろ, 診療だより
ホクロの治療は奥が深いです。
ホクロの治療で美容外科医の実力が分かるのでは?
単純な治療だからこそ技量が出やすいのだと思います。
「それはちょっとな~」と思った患者さんを提示します。
高校生の頃にチェーン(全国展開)美容外科でホクロ治療をうけたそうです。
治療した周囲に色素斑が残っています。治療範囲が狭すぎるのです。
ダーモスコピーです。中央部は白く瘢痕となっています。
反対の頬部にもホクロ治療の取り残しがあります。
中央部がえぐれて周囲には色素斑が残っています。雑な治療ですね。
ダーモスコピーです。
違う有名チェーン美容外科でホクロ治療を受けた別の患者さんです。
えぐれてクレータ状になっています。
凹ましたらダメなのです。
もとには戻りません。2~3回治療してもよいから凹まさずにに治すのがプロです。
一般的にホクロ治療は炭酸ガスレーザーを用います。
もちろん私も使用しています。
焼灼モードは熱ダメージの少ないSP(スーパーパルス)モードを選択します。
葛西健一郎先生の書かれた「炭酸ガスレーザー治療入門」から引用しました。
ホクロは浅く広く焼灼するのが基本です。下の図なら bではなく cが正解です。
葛西形成外科にてホクロの炭酸ガスレーザー治療を見学する機会に恵まれました。
山村有美先生の炭酸ガスレーザー焼灼は素晴らしかったですよ。
フットスイッチを足で小刻みに踏んでリズミカルに焼灼していました。
炭酸ガスレーザーは足で打つ!
私は患者さんに必ず言います。
「ホクロは浅い(薄い)のは1回、深い(濃くて隆起)ものは2~3回かけて治します」
SSクリニックを受診した患者さんです。
広く浅く焼灼します。焼灼直後の写真です。これでいいのです。
このタイプの単純黒子なら1回の焼灼で取れるでしょう。
ホクロ治療は凹ましたら負けです。
参考文献
炭酸ガスレーザー治療入門 文光堂 葛西健一郎、酒井めぐみ、山村有美 -
眼瞼下垂手術 ー修正術を振り返ってー
2010-04-22 UP! カテゴリー:眼瞼下垂, 診療だより
たて続けに眼瞼下垂の修正術を行いました。
思うところがあります。
下の症例は眼科の先生より紹介を受けた症例です。
3年前に某総合病院の眼科で眼瞼下垂手術を受けられました。
術後の腫脹が3年経過しても取れず、睫毛内反を併発して眼球の痛みに苦しんでおられました。
眼瞼下垂の過矯正が原因です。修正術を行いました。
切開して固定された糸を探します。
糸を3本抜糸しました。
ここからが問題です。
糸を外しても過矯正された挙筋腱膜が元に戻らないのです。
眼科の手術では挙筋腱膜を瞼板から剥離するので下床と強く癒着してしまうのです。
なんとか挙筋腱膜を剥離して過矯正を解除しました。
術後、眼瞼の腫脹と過矯正さらには睫毛内反は治りました。
患者さんからは感謝されましたが手術は大変でした(修正術なので自費診療です)。
久保田伸枝先生の書かれた「眼瞼下垂」文光堂から引用します。
やはり挙筋腱膜を瞼板から剥がし、再固定する術式が書かれています。
次は私が執刀した眼瞼下垂手術の修正術です。
術後の経過はよかったのですが、寝ているときに子供が顔につっこんできてから左眼が
下がってきたとのことです。糸が外れてしまった可能性があります。
切開したところ、内側の糸が緩くなっていました。このようなケースは初めてです。
糸を外して挙筋腱膜を前転します。
挙筋腱膜が瞼板と癒着していないので前転はスムーズに行えます。
右眼に合わせてプロリン糸で再固定して手術は終了です。
経過はとてもいいですよ。
信州大学形成外科方式の眼瞼下垂手術は挙筋腱膜の癒着が少ないため修正術」が比較的容易です。
信州大学形成外科方式は理論・術式とも素晴らしい手術です。
この術式が眼瞼下垂手術のスタンダードなものになるとよいですね。 -
皮膚科医が行うフォトRF治療
2010-04-15 UP! カテゴリー:しみ フォトRF, 診療だより
彼女のしみの診断は?
鼻にも色素斑があることより、主体は肝斑よりは雀卵斑と日光黒子(老人性色素斑)が
混在したものでしょう。鼻に病変があるかどうかは診断にとても大切なポイントです。
右外眼角部の外側には大きな日光黒子もあります。頬部には毛細血管拡張も見られます。
実は数ヶ月前にQスイッチルビーレーザーを照射しているのです。取り残しです。
カルテを見ると4J での照射となっています。照射パワーが低すぎましたね。
日ごろブログで大きなことを言っている割にはお粗末です。反省しています。
炎症後色素沈着はいづれ消退するのですから気にすることはない。
むしろ照射パワーが低すぎることに気をつけないとダメですね。学びました。
話を変えます。
この方の頬部全体にシミにはフォトRF治療がいいと思います。
色白な方です。いきなりSRA で照射してもよいでしょう。
SRA 照射終了時の写真です。
シミの周囲が赤くなっているのが分かりますか? この紅斑反応がすごく大切なのです。
白く囲んである部分は肝斑を疑った部分です。さすがにこの部分には照射を控えます。
フォトRF治療はダウンタイムが少ない治療とされています。
結論から言えばダウンタイムがゼロで効果がでるシミ治療は存在しません。
フォトRF治療でもシミを薄くするにはmicro crust と呼ばれる微小な痂皮を生じさせることが必要です。micro crust を生じるかどうかは照射後の紅斑反応の有無と相関しています。
私はこの紅斑反応を目安に照射モードを設定します。
SRAのいやらしい点はこの紅斑反応が照射して数分経過してから出現するところです。
レーザーマニュアルには記載されていません。すべて臨床実地より学びました。
私はシミに一発照射して数分待ちます。とても大切なポイントです。
SRA照射1週間後です。micro crust がかなり取れてきました。
ほどよく照射すれば1回の照射でもこのくらいまでシミは薄くなります。
フォトRF治療は最適な照射条件の選択が大切です。それが医師の仕事です。 -
進化するフォトRF治療
2010-04-08 UP! カテゴリー:しみ フォトRF, 診療だより
一つの医療機器を使いこなすには2年かかるな、というのが現在の実感です。
単に私がおバカなだけかもしれませんが・・・。
平成20年5月の開院時よりフォトRF治療を取り入れていました。
最初はメーカーさんから送られる資料を参考に照射していましたが、満足のいく結果が
得られないこともありました。悩みました。
日々の照射、その治療結果からのフィードバックを経て、ようやく自信を持てる治療レベルに近づきました。
ここまで2年かかりました。
治療例を参照に私が行うフォトRF治療の変遷、考え方について述べたいと思います。
下の写真は赤ら顔を主訴に受診された方です。
フォトRF治療にはSR とSRA の2つのハンドピースがあります。
赤ら顔には470~980nm とヘモグロビンへの吸収が高い波長を含むSRA を選択します。
施術1週間後です。本人は「赤ら顔にいいですよ。頬部にハリも出ますね~」とご満悦です。
本題はここからです。
両頬部に細かい痂皮(micro crust)が出現しているのが分かりますか?
右頬部のアップです。シミの一部に細かい痂皮が出ています。
左側の頬部のアップです。
1ヵ月後です。写真では分かりにくいですが、ほくろは残っていますが頬部のシミが少しだけ
薄くなっています。
もしもこの方の主訴が赤ら顔ではなく、頬部のシミ、くすみだったらどうでしょう?
私も1回目の照射は標準ハンドピースのSR を選んでいたでしょう。
おそらくこの方はSR で5回照射してもシミの改善は出なかったと思います。
どんなに照射パワーを上げてもSR では効果が出にくい症例は存在するのです。
思うに、2回治療して効果がない治療は10回治療しても効果がでないのではないでしょうか?
ハンドピースのSR とSRA の違いはなんでしょうか?
メーカーのカタログからの抜粋です。
SR 波長 580~980nm、照射時間 ~25ms
SRA 波長 470~980nm、照射時間 ~13ms
どちらもメラニンに対する波長を持っています。
シミ治療においては波長以外に照射時間が大きなファクターになっています。
日本人のしみ治療に25ms という照射時間は長すぎるのかもしれません。
SR にはそのよさもあります。
日に焼けた人、雀卵斑(ソバカス)の1回目にはSRA は反応が強すぎて使いづらいです。
色白の人のしみ・雀卵斑治療、よそのクリニックで何回も照射を受けた方は1回目からSRAを私は照射します。それでないと効果が出ないのです。
私には標準ハンドピースのSR のみでシミ治療の効果を出す自信がありません。
SR(Skin Renewal) とSRA(Skin Renewal Advance) の2本のハンドピースがあってこそ
満足のいくフォトRF治療が可能と私は考えています。
治療歴、スキンタイプを考慮してSR とSRA を適切に使い分ける。2~3回で治療効果を出す(インターバルは3~4週間)。そして年に1~2回程度のメンテナンス照射を行い効果を持続させる。
2年間のフォトRF照射の経験からこのよのうな結論となりました。
もちろん私の個人的な考えに過ぎません。
当医院は『予約制』です。お問い合わせ・診療のご予約はこちら 受付可能時間=診療時間 TEL 052-332-7870
診療時間
当医院は『予約制』です | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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AM 10:00 - PM 1:00 | ○ | ○ | ○ | / | ○ | ○ |
PM 2:00 - PM 4:30 | ☆ | ☆ | ☆ | / | ☆ | ☆ |
PM 5:00 - PM 6:30 | ○ | ○ | ○ | / | ○ | / |
○…通常診療
☆…手術/レーザー治療(フォトRFなど)/ヒアルロン酸/ボトックス治療など