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さまざまな治療に応用されるPRP治療
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PRP
2020.03.02
すでに美容クリニックや美容皮膚科などでは、人気のエイジングケアとして定着しているPRP治療。自分の血液の中にある血小板を注入して若返りを図る再生医療ですが、現在は肌再生だけでなく、さまざまな部位の再生目的にも応用されています。
PRP治療にはどのような効果があるのか、また、美容以外の効果についても詳しく解説します。
PRP療法とは
PRPとはPlatelet-Rich Plasma(多血小板血漿)の頭文字をとった名称で、血液の中に含まれる血小板を濃縮した物のことを指します。このPRPの中には、組織修復能力を有するさまざまな成長因子が含まれています。PRPを気になる部位に注入して内側から自然に組織を再生させる治療を、PRP療法と呼んでいます。
PRP療法は、2014年に施行された再生医療等の安全性確保等に関する法律の規制の枠組みに組み込まれているため、治療を行う医療機関は事前に厚生労働省に届け出を行い、認可を得ることが必要になります。
治療には主に患者さまの血液が使われており、培養せずにそのまま使用するため、安全性が高いと考えられています。
PRP療法にはいくつかの種類があります。初期に登場したリジェンACR療法、血小板の濃度を高めて白血球も含まれるW-PRP療法、W-PRPにさらに成長因子を添加した療法などがあり、登場時から現在まで改良をくり返しながら、より効果が高く安全な治療が行えるように進化し続けています。
美容医療におけるPRP治療の効果
美容目的でPRP治療を行う場合の効果には、以下のようなものがあります。
小ジワ、シワ、ほうれい線の治療
PRPに含まれる成長因子が、コラーゲンやヒアルロン酸を生み出す線維芽細胞を刺激し、これらの美肌成分の生成を促します。肌内部で組織のボリュームが回復することによって、内側からふっくらと肌が持ち上がり、シワが浅くなります。
深いシワから、ほうれい線横のシャーッと入った横ジワや、目の周囲の小ジワまで適応になります。当クリニックでは、シワの深さによって成長因子の濃度を調整し、適切に効果が出るように工夫を行なっています。
肌のくぼみの治療
生まれつきの顔立ちで、頬がくぼんでいる方が年齢を重ねると、頬がこけたて老けた印象を与える場合があります。PRP治療はこのくぼみも治療が可能です。注入により脂肪組織を造成させて、適度なボリュームを出し、若々しい顔立ちを目指します。
毛髪再生治療
ライフスタイルの変化により、女性の薄毛がここ10年来のトレンドとなっています。
PRPには毛髪を生やす作用と増やす作用があり、頭皮に注入することで毛髪を再生します。特に女性に多い、全体の髪の毛が細く軟毛になるびまん性脱毛症では、細くなった軟毛を太くする作用があるため、髪の毛が太くなり髪全体のボリュームアップを図ることができます。
PRP治療のメリット
同じシワの改善を目的としたヒアルロン酸注入に比べて、PRP治療には以下のような優れた点があります。
➀自然な仕上がり
ヒアルロン酸は注入するとすぐに結果が出るので、速攻でシワを薄くしたいという方に向いている治療です。そのため、周囲の人に変化が分かりやすいという側面もあります。
速攻で変化を求める欧米の女性と比べて、日本人女性は周囲にばれないようにキレイになりたいという方が多い傾向にあります。
その点、PRP治療は注入後に徐々に肌の内部で自己再生が進み、数カ月かけてゆっくりと効果が現れるため、周囲の人が気づかないうちに若返っているという目的が果たせます。注入直後の注射による腫れも化粧で隠すことができるため、こっそりとキレイになりたいと考える方には最適です。
②肌ツヤが良くなる
PRP治療では、肌内部のコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進することから、シワが薄くなる効果と同時に、ハリやツヤの改善も見られます。肌質も同時に若返るため、より若々しい顔立ちを目指すことができます。
③持続期間が長期間
薬剤の種類にもよりますが、ヒアルロン酸注入の効果の持続は一般的に半年〜1年程度です。これは、注入したヒアルロン酸製剤が、徐々に体内に吸収されるためで、最後にはもとのシワがある状態に戻ります。
一方、PRP治療は肌の再生を促す治療であるため、個人差はありますが数年にわたって効果をキープされる方が多いと言えます。
当クリニックのW-PRP治療を受けられた方では、平均3〜5年間の効果持続が認められます。ただし、ご自身の体質や注入部位に左右される傾向があるため、それより短い方や長い方もいらっしゃいます。
PRP治療のメリット
再生医療であるPRP治療は、美容目的のエイジングケアだけでなく、以下のような怪我や加齢による組織の損傷の治療にも応用されています。
➀膝の痛みに対する治療
スポーツ選手によく見られるハードな運動や加齢が原因で起こる膝の痛みの治療にも、PRPは使われています。欧米ではすでに良好な結果が得られている報告が多数あり、日本でもスポーツ整形外科など、PRP治療が受けられる医療機関が増えてきました。PRPを膝内部に注入し、組織の修復を促進して関節の炎症を抑制する効果が期待できます。
②損傷した靭帯を修復する治療
海外では2000年頃からプロスポーツ選手のケガの治療などにPRP療法が行われています。有名なアスリートでは、アメリカのメジャーリーグに移籍した大谷翔平投手が、2018年に部分断裂した右肘にPRP注射を行なっています。
こうした治療において、アスリートが注意しなければいけないのは、薬剤にドーピング成分が含まれているかどうかですが、PRP治療では自己の血小板を使用するため、その心配はありません。
③歯茎などの組織再生
加齢で衰えた口腔内の歯槽骨や歯周組織の再生を促進する治療にも、PRPは使用されています。インプラントなどを移植する際に、PRPも同時に移植し、周辺組織の再生を図ります。
さらに加齢による歯茎の下りを対象とした、審美歯科的な治療も行われています。
④不妊治療
体外受精を行った受精卵を母体に戻す際に、子宮の内膜の厚さが薄い場合は着床が難しく、妊娠に至らないという問題を克服するために、PRP治療が応用されるようになりました。受精卵を戻す前に、あらかじめ子宮内にPRPを投与し、子宮内膜を活性化させて着床しやすくなることを目的としています。
すでにこの治療で出産に成功した例が報告されており※、治療を導入する不妊治療専門クリニックが広がりつつあります。
※ 「菲薄化した子宮内膜に対する多血小板血漿(PRP)を用いた不妊治療研究-出産例 3 例の報告」
- Doctor comment
- ドクターコメント
PRP治療というと、まず美容分野での認知が大きいかと思いますが、効果は多岐にわたります。
これからも新しい応用が期待される医療ですが、意外と知られていないのがPRP治療は再生医療であるという点です。PRP治療を提供する医療機関は、法律に則って安全性を確保するための計画を厚生労働省に提出し、認可を受けることが必要となります。当クリニックもPRP治療の認可を受けています(再生医療第3種 計画番号:PC4150021)。
つい最近も、無届けで再生医療実施した容疑で、大学病院の元講師が刑事告発されるというニュースがありました※。このように無許可で再生医療を行うと罰則が科せられます。PRP治療を検討されている方は、あなたの安全を担保するために、その医療機関が再生医療の認可を受けているかどうかを、まず確認するようにしてください。
※ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53744220U9A221C1AC8000/
この記事の監修
SSクリニック 柴田真一 院長
プロフィール
- 経歴
- 平成6年 岡山大学医学部卒業
社会保険中京病院(臼田俊和 部長)
虎の門病院(大原國章 部長)に勤務 - 平成12年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 助手
- 平成16年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 講師
- 平成20年 皮ふ科SSクリニック(現在 SSクリニック)開院
- 所属学会・資格
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚外科学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚外科学会評議員
- 日本アンチエイジング外科美容再生研究会 認定医