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- PRP治療の「美容成分」は、肌再生に働きかける成長因子!
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PRP
2020.05.03
シワやたるみなどのエイジングケアに効果が期待できる美容成分と聞くと、何を思い浮かべますか? おそらく、コラーゲンやヒアルロン酸といった、一般的な化粧品に配合されている成分を思い浮かべる方も多いでしょう。それではエイジングケアで人気の「PRP治療」の美容成分は何でしょうか? と質問されると、一瞬答えに詰まる人が多いのではないでしょうか。
美容医療の分野では、ある程度知名度のあるPRP治療ですが、この治療がもたらす若返りのメカニズムについてご存じの方は少ないのかもしれません。
そこで今回は、気になるPRP治療の「美容成分」に迫ります!
PRPを使った美容法とは
そもそもPRPとは、「Platelet Rich Plasma」という英単語の頭文字をとった略語です。直訳すると「血小板が豊富な血漿(けっしょう)」という意味になります。
私たちの血液は、赤血球・白血球・血小板という3種類の細胞成分と、血漿と呼ばれる液体成分でできています。割合は細胞成分が約45%、血漿は約55%と半分以上を占めています。血漿成分の約90%は水分で、その他にタンパク質、ブドウ糖、ナトリウムイオンなどを含み、体液を保持して物質を運搬する役割を担っています。
PRP治療では、自分の血液を遠心分離機にかけて赤血球と白血球を取り除き、血小板と血漿のみを抽出します。つまり、血漿のなかに血小板が豊富に含まれている(=Platelet Rich Plasma)状態の液体を作り出します。さらに少量の白血球を加えたり、成長因子を加えたりして高い効果を狙う手法もあります。
血小板には、血管が損傷した際に損傷した場所に集まって止血をする働きがあります。傷ついた組織の周辺で、血小板が多量の成長因子を放出し、組織を修復します。つまり、豊富な血小板を含んだ液体(=PRP)を加齢した皮膚に注射器で注入することで、血小板が加齢によって衰えた組織を修復・再生する、というのがPRPを使った治療法です。
PRPに含まれる美容成分
上記で説明しましたとおり、血小板から放出される「成長因子」が加齢した組織に働きかけて肌を再生し、シワや凹みなどの加齢症状をなくしていくことから、ここではこの成長因子がイコール美容成分であると考えます。
成長因子の種類はひとつではなく、複数の種類がそれぞれの役割を担っています。
主な成長因子を詳しく解説します。
①EGF(上皮成長因子)
EGF(Epidermal Growth Factor)は、肌の上皮幹細胞に働きかけて上皮細胞の成長促進を行うタンパク質です。
肌のターンオーバーを促進して、正常なサイクルに戻す作用があるため、シワや目の下のクマなどを薄くする作用が期待できます。また血管新生作用、創傷治癒作用も持ち合わせているため、当初は医療分野で褥瘡(床ずれ)の治療に使用されていました。
アメリカの生物学者スタンレー・コーエン博士が発見し、1986年に一連の研究業績でノーベル医学生理学賞を受賞したことでも有名です。
②FGF(線維芽細胞増殖因子)
FGF(Fibroblast growth factors)は、肌の真皮に存在する線維芽細胞に働きかけて、コラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンなどの肌の構造を維持する成分を生成するタンパク質です。
その他に、血管新生作用、創傷治癒作用など組織の修復にも関係しています。
③PDGF(血小板由来成長因子)
PDFG(Platelet-Derived Growth Factor)のPはPlatelet(=血小板)のことで、その名の通り血小板に貯蔵されているタンパク質です。
血小板の活性化に伴って放出されます、血管平滑筋細胞や線維芽細胞の増殖因子として働き、細胞増殖作用、組織の修復作用、血管新生作用、コラーゲンの産生作用があります。
④VEGT(血管内皮細胞成長因子)
VEGT(vascular endothelial growth factor)は、主に血管内皮細胞表面に作用して、細胞分裂や分化を刺激し、血管新生に関与するタンパク質です。
⑤TGF-β(トランスフォーミング増殖因子)
TGF-β(Transforming Growth Factor-β)は、シグナルタンパク質と呼ばれており、組織新生、細胞分化などに関与しています。
上皮細胞を発生させたり、血管内皮膚を増殖させたり、創傷治癒を促進する作用があります。
上記の5種類の成長因子は代表的なものですが、機能がオーバーラップしているところがあります。
PRP治療のメリット・デメリット
血小板の働きにより若返り効果を目指すPRP治療ですが、そのメカニズムにはメリットとデメリットがあります。
詳しく見ていきましょう。
メリット
〈自然な仕上がり〉
肌内部でさまざまな成長因子が放出されて、不足していたコラーゲンやヒアルロン酸などが再び生成されるため、徐々に肌が若々しく改善されていきます。
注入後すぐにシワが薄くなったり、肌から注入した異物が透けて見えたりといった、不自然な現象はおこりにくいといえます。
〈効果が長持ち〉
血小板から成長因子の放出はある程度持続するため、効果の落ち方も比較的ゆっくりであると言えます。また、ヒアルロン酸のように体内に吸収されて消失することもありません。
効果は数年〜5年以上持続するケースもあります。
〈安全性が高い〉
再生医療の分野ではあるものの、ご自身の血液を製剤として使用するため、アレルギーなどの拒絶反応が起こりにくいと考えられています。
〈ダウンタイムが少ない〉
レーザー治療に比べて火傷の心配はなく、術後の腫れなどのダウンタイムが短いのも大きな特徴です。
ごくまれに3日程度赤みや腫れが続く場合がありますが、大抵はそのまま消失していきます。この場合は、予防処置として医師による経過観察を行います。
〈従来の治療では難しいシワも対象に〉
ヒアルロン酸やボトックス製剤などのシワ治療では消すことが難しい、首にできる横ジワやほうれい線の横にできる細かなシワも治療が可能です。
〈二次的なハリツヤ効果〉
若かった頃の肌の状態に戻す治療であるため、シワが薄くなることに加えて、肌内部の水分保持力も改善し、ハリやツヤがよみがえる二次的な効果も期待できます。
デメリット
〈即効作用がない〉
肌内部に注入された血小板が働いて、徐々にシワが薄くなっていくため、注入後すぐに結果は得られません。
即時的な治療効果を求めるのであれば、ヒアルロン酸注入のほうが適しています。
〈受けられない方がいる〉
再生医療による治療のため、妊娠中の女性のPRP治療は禁忌とされています。
PRPを使った美容法は再生医療です
PRPを使った美容法は、再生医療分野の治療になります。そのため、この治療法を行う医療機関は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づいて、国に届出を提出しなければいけません。
当クリニックでは、W-PRP療法という白血球を少量残したPRPを使用したエイジングケアを行っていますが、これについて提供計画書を提出し、受理されています。(再生医療第3種 計画番号:PC4150021)
PRPはその再生能力を生かして、美容的な治療だけでなく、その他の分野の病院でも治療に使用されています。
スポーツ医療分野では過剰な訓練やケガなどで損傷した靭帯などの組織の治療に、歯科分野ではインプラント前の歯茎の再生治療などに、再建外科の分野では乳がんの手術後に行う乳房再建に、それぞれ使用されています。乳房再建とは、がん組織を取り除いた部位に自分の脂肪を移植することです。この場合、脂肪だけを移植すると一部の脂肪は生着せずに石灰化するケースがあり、それを防止するためにPRPを脂肪と一緒に注入することで、生着率の向上を図ります。
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- ドクターコメント
PRPを使った美容法は、当クリニックも10年前から取り組んでいるすぐれた治療法です。今回のコラムでは、成長因子という少し難しい成分を解説しましたが、ざっくり言うと「衰えた組織の再生に働くタンパク質」になります。
このように優れたエイジングケア効果が期待できるPRPですが、シワの種類によっては治療が適さない場合もあります。例えばたるみ治療の一つで、加齢によって下垂した靭帯の下にヒアルロン酸を注入して肌を持ち上げるリフトアップ法がありますが、これはPRPではできません。
その他にレーザー治療やボトックス注射のほうが適応になる加齢症状もありますので、カウンセリング時には医者としっかりと相談して、適切な治療を見極めてもらいましょう。
この記事の監修
SSクリニック 柴田真一 院長
プロフィール
- 経歴
- 平成6年 岡山大学医学部卒業
社会保険中京病院(臼田俊和 部長)
虎の門病院(大原國章 部長)に勤務 - 平成12年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 助手
- 平成16年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 講師
- 平成20年 皮ふ科SSクリニック(現在 SSクリニック)開院
- 所属学会・資格
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚外科学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚外科学会評議員
- 日本アンチエイジング外科美容再生研究会 認定医