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- まぶたが下がって、目が開きづらくなる
眼瞼下垂(がんけんかすい)について解説します
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眼瞼下垂
2019.10.31
若い頃に比べて目が開けづらくなった、しっかり目を見開いてもまぶたが上がらない、夕方になるとまぶたが重くて目を閉じたくなる、などの症状を自覚されている方は、眼瞼下垂というまぶたの病気かもしれません。
眼瞼下垂は、まぶたを持ち上げる筋肉(挙筋腱膜)が弱まってしまったり、挙筋腱膜とまぶたを支えている組織(瞼板)の接着部分がゆるんで、筋肉の動きが伝わりづらくなったりすることで起こります。眼瞼下垂が進行すると、目をしっかり開けていても、上まぶたが下に垂れてしまい、黒目の部分に被さることで視野が狭くなってしまうケースもあります。
治療は、保険診療と自由診療のどちらも選択できますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
今回は、この眼瞼下垂について解説します。
眼瞼下垂とは
眼瞼下垂とは、上まぶたが垂れ下がって、目が開けづらくなる病気です。
目の開きが悪い、まぶたが下がる、まぶたが重いといった自覚症状が出るため、視界を得ようとして無理矢理目を見開くようになり、その結果、肩や顔の筋肉の緊張が強くなり、肩こりや頭痛などの体の異変を引き起こすことがあります。
眼瞼下垂は、女性で40代、男性では50代から始まると言われています。なぜ女性の方が10年ほど早いのかというと、女性はお化粧をする方が多く、アイメイクやクレンジングなどで頻繁に上まぶたこすることが多いため、その摩擦で挙筋腱膜が伸びてしまうと考えられています。
重度になると黒目の半分ぐらいがまぶたに覆われてしまいます。
眼瞼下垂の原因
眼瞼下垂は、先天性の原因と、加齢とともに生じる後天性の原因、さらに他の病気が原因となって起こるものがあります。
先天性眼瞼下垂の原因には、生まれつき挙筋腱膜の成分や全体が欠損してまぶたを持ち上げる筋力が弱い場合や、逆に靭帯が発達しすぎて上まぶたが開きにくい構造になっている場合(一重まぶたや奥二重の方が多い)などがあります。
後天性眼瞼下垂の原因には、最も多いケースで加齢による挙筋腱膜の弱まりが挙げられます。他にはハードコンタクトレンズ装着や花粉症、クレンジング、アトピー性皮膚炎などで上まぶたを過剰にこすってしまい、挙筋腱膜がゆるんでしまうケースがあります。
他の病気が原因となるケースには、全身の筋力が弱くなる「重症筋無力症」や、神経の機能などが低下する「ミトコンドリア脳筋症」が挙げられます。後天的眼瞼下垂を合併していることもあるため、QOL(quality of life=生活の質)の向上のため、治療を行うこともあります。
近年では、高齢化社会に伴った加齢による後天性眼瞼下垂が増加しています。ただ、以前他の医療機関が行ったアンケートでは、17.7%程度※しか認知されておらず、自覚症状があっても放置されているケースも見受けられます。
眼瞼下垂は、手術による治療の必要性が高く、眼科や形成外科などの病院において保険診療による治療を受けることが可能です。
しかし、老化による眼瞼下垂は、まぶたのたるみを併発していることも多いため、たるんだ皮膚の切除を行ったり、顔と目のバランスなどを整えたりする美容的な施術を行う、自由診療の美容外科や美容皮膚科を選ばれる方もいます。
次に詳しく解説します。
※StockSun株式会社による実態調査より https://medical.jiji.com/prtimes/1309
保険診療と自由診療の治療の違い
眼瞼下垂は、保険診療と自由診療のどちらでも受けることができます。どちらにもメリットとデメリットがあるため、よく知って受診することが大切です。
【保険診療】
メリット
最大のメリットは、手術が少額で受けられることです。3割負担で4万円前後、1割負担で1.5万円ほどになります。
デメリット
眼科や形成外科などで受けられますが、眼科は眼球を専門とする医師が多く、まぶたのような眼縁部位はある意味専門外です。そのため、他の医療機関から医師を呼んで手術を行うといったケースも見受けられます。
また保険の範囲の処置しか行えないため、まぶたのたるんだ皮膚を切除しない場合が多く、術後は目に皮膚がかぶさった仕上がりになることも。さらに、術後に目を閉じても閉じきらない兎眼(とがん)になったケースもありました。
【自由診療】
メリット
上まぶたの機能回復手術を行うと同時に、余分な脂肪や余った皮膚を切除し、美容的な観点から施術を行うことができます。
眼瞼下垂手術後は、誰もが二重まぶたになります。自由診療では、通常の二重形成術と同じく、術前にブジーと呼ばれる器具を用いてカウンセリングを行い、自分のなりたい二重の形に形成することができます。
皮膚のたるみが強く、眼縁の処置のみでは取りきれない場合は、眉下を切除してたるんだ皮膚を切除する「眉下リフト」と呼ばれる術式を組み合わせることも可能。保険診療と比べて柔軟な施術で、機能と美しさにこだわった仕上がりを目指すことができます。
また、一度眼科や形成外科で眼瞼下垂手術を受けた方で、左右差ができてしまったなど、仕上がりに満足がいかなかったという方でも、美容外科や美容皮膚科の再手術でカバーすることができます。
デメリット
自費診療のため、保険診療に比べて治療費が高額になります。
美容外科・美容皮膚科の眼瞼下垂手術とは
それでは、美容外科・美容皮膚科ではどんな治療が行われているのかを、当クリニックのケースをもとに解説します。
1:カウンセリング~デザイン
カウンセリングでは、二重のデザインを患者の方と相談します。幅広の二重が良いのが、狭い二重が良いのかなど、しっかりと仕上がりのイメージを共有します。
2:マーキング
皮膚の切除の幅をマーキングします。術前にはテープと注射による局所麻酔を行います。
3:手術
局所麻酔注射を行ったのち、デザインに沿って切開し、余分な脂肪をカットして挙筋腱膜を出します。その後、挙筋腱膜を医療用の糸で瞼板に固定します。余った皮膚を切除し、ご希望の仕上がりになるよう縫い縮めます。患者の方には手術中に何度か座っていただき、起きた状態での二重のデザインを確認します。
4:術後
術後は10分ほど冷やして、傷口から出血がないか確認して帰宅します。一週間後に抜糸を行い、1ヵ月毎に診察を行い、3ヵ月後に治療は完了します。
- Doctor comment
- ドクターコメント
眼瞼下垂というと、年を取った方の病気というイメージが強くあると思います。当クリニックに来院される方も50代がメインですが、昨今の長寿化社会を考えると、70代~80代の方にもぜひ受けていただきたい手術です。目の開きが良くなると、身体がとても楽になったという患者さまのお声も頂戴しており、その後の人生のQOL(生活の質)を高めることができます。
また、先天的な要素の影響が大きい10代の眼瞼下垂手術も行っています。目の開きが良くなるだけでなく、幼い頃から悩まされていた頭痛が改善した、勉強への集中力が高まったというケースもあります。
眼瞼下垂手術は目の構造を変える手術だと私は考えています。先天的・後天的な要素を鑑みながら、治療部位だけでなく、トータルに目まわりの症状を治療し、美容的にも満足のいく仕上がりを目指しています。
この記事の監修
SSクリニック 柴田真一 院長
プロフィール
- 経歴
- 平成6年 岡山大学医学部卒業
社会保険中京病院(臼田俊和 部長)
虎の門病院(大原國章 部長)に勤務 - 平成12年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 助手
- 平成16年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 講師
- 平成20年 皮ふ科SSクリニック(現在 SSクリニック)開院
- 所属学会・資格
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚外科学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚外科学会評議員
- 日本アンチエイジング外科美容再生研究会 認定医