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PRPの治療費について
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PRP
2020.04.06
再生医療領域の若返り治療として人気のPRP治療。約10年以上前に、自由診療の美容クリニックで登場し、近年では多くの医療機関で手軽に受けることができます。
登場した当初は新しい治療ということもあり、お顔全体で100万円を超える高額な治療費を設定しているクリニックもありましたが、現在では数十万円程度に落ち着いています。このPRP治療を安く提供するクリニックも、インターネット上などで目にするようになってきました。
そもそも美容目的のPRP治療は、保険適用がない自由診療であり、各クリニックが自由に価格を設定することができます。しかし、あまりにも安い治療費だと、大丈夫なのかどうか不安を感じる方もいらっしゃると思います。
今回はPRP治療の価格について、詳しく解説します。
エイジングケアで人気のPRP治療
PRP治療は、ご自身の血液から抽出したPRP(PRP=Platelet Rich Plasma)を用いて行う、肌の再生治療です。PRPには豊富な成長因子が含まれており、加齢部分に注入することで、衰えた肌の機能を回復させることを目的としています。適応症状には、顔や手、首などの小ジワ、シワ、凹み、さらには薄毛・抜け毛治療にも使われています。
注射だけの治療なので、患者さまの負担が少ないのもメリットです。ヒアルロン酸注入と比べて即効性はありませんが、1ヵ月後くらいから徐々に効果が認められて、数年間持続します。
再生医療の一種(再生医療第3種)であり、この治療を行う医療機関は国に届出を提出しなければいけません。これは、美容整形外科でも美容皮膚科でも同じです。当クリニックでも提供計画書を提出し、受理されています。(再生医療第3種 計画番号:PC4150021)
治療の価格の内訳
PRP治療はそもそも公的保険適応外なので、クリニックが自由に価格を設定できます。
ひとつの目安として、当クリニックの価格を表記してみます。(※いずれも税込み価格)
目の下(両側):183,000円
ほうれい線(両側):214,000円
首:280,000円
顔全体:428,000円
価格には、血液採取〜PRP作成の費用と施術料、麻酔代金が含まれます。
人によって必要があるものは別途費用になります。たとえば特殊な細い針を使う場合は、針代が別途かかる場合があります。また、シワの数が極端に多い場合は、手技料が増額になるケースがあります。
PRP治療に歴史がある他のクリニックも見てみましょう。
Aクリニック ※全国にチェーン展開あり
目の下(両側):319,000円
ほうれい線(両側):319,000円
Bクリニック ※個人クリニック
目の下(両側): 198,000円
ほうれい線(両側):264,000円
※上記以外に施術料金と薬剤費が約6,000円程度発生。
クリニックによって費用の差はあるものの、小範囲でも10万円台後半からという価格が一般的です。
ネットに溢れる安価な治療にご用心
このような治療費が平均的なPRP治療ですが、インターネット上で驚くほど安い治療費を見かけることがあります。
一体なぜ、こんなに安価なのでしょうか?
ひとつ考えられることは、これは通常価格ではなく、何らかのキャンペーン価格である可能性です。
平均数十万円かかるPRP治療が、数万円で受けられるとのことで、新しい患者さまを集める目的で、初回だけの価格に設定されていることがあります。
PRP治療がなぜ費用がかかるかを説明する、2つの大事なポイントがあります。
ひとつは、きちんとしたPRPを作成する手間にあります。
採取した患者さまの血液を、遠心分離器に1回ないしは2回かけて作成するという作業は手間がかかります。さらに、遠心分離機にかけたあとの血液において、赤血球との境界部に血小板があるため、手作業ですくい上げます。血小板はある程度の濃度がないと効果が出ないため、細心の注意を払い、時間をかけて作業を行います。適切なPRPを作成するのにはコストがかかります。
もうひとつは、医師の技量です。
ヒアルロン酸と比べて、PRPは皮膚に打つ深さが異なります。大体、皮膚と脂肪の中間の皮下組織の浅いところに注入しますが、経験がないと効果が発揮できない間違った層に注入してしまうことになります。
このように安価なPRP治療は、コストとのバランスが全くとれていません。そのため、治療効果や品質にも疑問が残ります。
PRP治療費用の考え方
このコラムを読んでくださっている読者さまは、なんとなくPRP治療よりもヒアルロン酸注入のほうが安価であるというイメージをおもちではないですか? 実は価格を比較すると、一概にそうではないことがあります。
例えば、ヒアルロン酸注入は、安いクリニックで1本(1.0cc)2〜5万円程度、高額なところでは1本(1.0cc)7〜10万円程度の治療費がかかります。
顔全体に入れる場合は、相当量のヒアルロン酸が必要なのですが、治療費が100〜150万円かかることもあります。当クリニックのPRP治療では顔全体で428,000円ですから、倍以上の費用になってしまいます。
1本単位で価格を表記するため、割安に思えますが、治療が1本で終わることはめったにありません。
さらに、治療の持続期間を考えると、コスパが良いという側面もあります。
ヒアルロン酸注入は、個人差はありますが、半年〜1年程度で体内に吸収されて、元に戻ります。対してPRP治療は、数年単位で効果が持続する治療です。個人差はありますが、2〜3年、あるいは5年以上効果が持続している患者さまもいらっしゃいます。
PRP治療は決して安くはありませんが、顔全体に行う治療としては、決して割高ではないと言えるでしょう。
- Doctor comment
- ドクターコメント
PRP治療を受けたいと思われている方にとって、治療費はどこのクリニックで受けるかの大事な指標のひとつでしょう。しかし、私は安すぎるクリニックでの治療はおすすめしません。
PRP治療は、医師の技量が問われる治療でもあります。治療効果が長期間に及ぶため、希望しないところが膨らんだ場合、つらい時間がずっと続きます。例えばしこりになってしまったところは、ヒアルロン酸のように分解ができないため、治療法もありません。この問題を解消するために、当クリニックでは注入後に全体的に伸ばすようにマッサージを行い、膨らみすぎない工夫を行っています。
また、アフターフォローも大切です。術後の腫れ、仕上がりなどの相談や、数年後の肌も相談できる医師と付き合うことが、患者さまにとって結果としてメリットになるでしょう。例えば、PRP治療では取りづらいシワというのがあります。そのようなシワを含め、柔軟に患者さんの希望にそえるような提案ができる医師を選びましょう。
逆にPRPでないと治療できないというシワもあります。これは、医師がこれまでどれくらいの経験を積んできたかで見極めが異なりますので、クリニックの症例数も大切です。
安さを謳うクリニックでは、ホームページで医師の経歴や症例数なども確認してみましょう。
この記事の監修
SSクリニック 柴田真一 院長
プロフィール
- 経歴
- 平成6年 岡山大学医学部卒業
社会保険中京病院(臼田俊和 部長)
虎の門病院(大原國章 部長)に勤務 - 平成12年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 助手
- 平成16年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 講師
- 平成20年 皮ふ科SSクリニック(現在 SSクリニック)開院
- 所属学会・資格
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚外科学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚外科学会評議員
- 日本アンチエイジング外科美容再生研究会 認定医