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汗管腫の原因と正しい治療法
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汗管腫
2020.03.02
ニキビや湿疹など、顔にできるブツブツは特に気になるもの。なかでも30歳代以降にあらわれはじめ、スキンケアでは消すことのできない汗管腫は、女性が発症する確率が高い皮膚の腫瘍です。ところが、皮膚科を訪れても治療をしてくれないといったケースが起きることがあります。今回のコラムではその理由と、正しい治療法について詳しく解説します。
汗管腫とは
汗管腫は、汗を分泌する器官のひとつであるエクリン汗腺のもととなる汗管が、真皮内で増殖することで発生する病気です。肌内部で腫瘍が増殖するため、その部分の皮膚の表面は1〜3mm程度盛り上がり、これが肌のブツブツとしてあらわれます。痛みやかゆみはありません。
症状は目の周りに現れることが多く、特に下眼瞼(目のすぐ下の部位)が一番あらわれる部位です。次に上眼瞼(上まぶた)、額の順番であらわれる傾向にあります。顔の目立つ部分に好発するため、治療を検討される方も多く存在します。
なかには体中にできる特殊なケースもあります。全身にできる場合は服で隠すことができますが、腕や手などの露出度が高い部位はやはり気にされる方もいらっしゃいます。
汗管腫の原因
汗管腫は、はっきりとした原因が解明させていません。ですが、原因ではないかと考えられていることがあります。
ひとつは、加齢が関係しているのではないかということです。30歳ぐらいから発症し、年齢を重ねる毎に目立ってくるケースが多いため、もともとあった汗管が育ってきたのではないかと考えられます。
もうひとつは遺伝的な要素が関係しているのではないかと考えられています。
汗管腫の誤った対応
汗管腫は診断が難しく、ともすれば老人性イボや稗粒腫(はいりゅうしゅ)などに誤診されやすい病気です。またホームケアでも誤ったケアを行なっている方も見受けられます。以下に、間違った対応を挙げてみます。
クリニックでの誤った対応
・放っておく
汗管腫は良性の腫瘍であることから、医療機関で治療の必要はないと言われ、仕方なく放置するというケースを見聞きします。しかし、放置後は小さなブツブツが融合して大きな面となり、見た目がますます悪化するという可能性があります。
・液体窒素で治療する
いわゆるイボに対する治療とは異なり、汗管腫は皮膚の真皮内で発生する腫瘍であるため、皮膚の表面を治療する液体窒素は適応ではありません。病原を取り除くことができず、さらには何回もくり返し治療すると、炎症を起こす場合があります。炎症は色素沈着の原因となりますので、肌が黒ずんでしまう原因となります。
老人性のイボや稗粒腫などと誤診して、液体窒素で治療を行なっている可能性があります。
・ピーリング
ニキビやシミの治療として有効なピーリングは、皮膚表面の角層を剥がす治療のため、液体窒素と同じく汗管腫は改善されません。
汗管腫は稗粒腫に間違われやすいと述べましたが、稗粒腫にはうぶ毛のつまり同じような症状が現れるため、これをニキビと勘違いしてピーリングを行っているのではないかと考えられます。
ホームケアでの誤った対応
・アイクリームなどの化粧品
目もと専用のクリームにはビタミンAが配合されているものもあり、塗った後に少しハリが出るような作用があります。そのため、汗管腫の症状である皮膚の盛り上がりが目立たなくなる可能性がありますが、根本的な効果はないと言っても良いでしょう。
・イボ専用の外用薬/ニキビ治療薬
イボと勘違いし、いわゆる「イボコロリ」などの皮膚軟化薬を使用する方がいらっしゃいますが、危険なので行なってはいけません。サリチル酸というピーリングに使う酸の一種が配合されているため、誤って目の中に入ってしまい角質を剥離する可能性があります※。
また、ビタミンA誘導体が配合されているニキビ治療薬が処方されているケースでは、稗粒腫やニキビと誤診していることが考えられます。汗管腫はこれらの処方薬では治りません。
・ヨクイニン、ハトムギエキスなどの内服
ハトムギエキス(ヨクイニン)は、ウイルス性のイボに対して、内服することによる免疫力の向上を図る治療に使われています。
最近、首のイボにヨクイニンが効果ありとインターネットで広告が行われていますが、首のイボはウイルス性ではなく軟性線維腫のため、効果はありません。(この広告には、不適切な表記で誤った使用を招く懸念があるとして、日本皮膚科学会から抗議が行われています※。)
同様に、皮膚内部の腫瘍である汗管腫にも効果はありません。
※ https://www.nishinippon.co.jp/item/o/395636/
インターネット上では汗管腫のさまざまな情報が掲載されていますが、多くは信憑性がありません。また、汗管腫の見極めは難しく、皮膚科専門医でも間違った診断をすることがあります。正しい治療を行うためには、皮膚科専門医がいる皮膚科もしくは美容皮膚科の受診をおすすめします。
汗管腫の治療は、美容皮膚科へ
前述の通り汗管腫は、健康被害をもたらすような病気ではありません。そのため、見た目の改善治療が必要であると診断するのは美容皮膚科の領域になります。これは自由診療にあたりますので、全額自己負担となります。
美容皮膚科にはいくつかのメリットがあります。
まず、正しい診断を行えるという点です。美容皮膚科は皮膚科専門医が多く在籍しており、正しい診断できちんと原因をお伝えすることができます。
また汗管腫の患者さまも多く訪れるため、見分ける知見がある医師にあたる確率が高くなります。さらに見分けがつきにくい場合は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で観察する、生体検査(病理検査)を受けることも可能です。当クリニックでも行なっているこの検査法は、細胞レベルで組織を確認するため確実な診断ができます。ただし、実施していないところもあるため、来院前にクリニックに確認すると良いでしょう。
次に、適した治療が行える点です。正しい診断によって、真皮内部に汗管腫が確認できた場合には、炭酸レーザー、エルビウムYAGレーザー、針電気凝固法などで、真皮内の汗管を取り除くことができます。
最後に、美しい仕上がりを目指すことが当然という認識を、医師がもっていることです。患者さまは汗管腫の見た目を改善したいと、美容的な治療を希望しているのですから、アフターケアも含めて美容医療のアプローチを行なっている美容皮膚科が適していると言えます。
- Doctor comment
- ドクターコメント
生活習慣が原因ではない汗管腫は、気をつけていても発生することが防げない病気です。
できてしまった汗管腫を改善したいと希望される方は、自己判断で悪化させることのないように、専門医の診断をまず受けるようにしてください。
また美容皮膚科には有効な治療法がありますので、複数のクリニックのカウンセリングなどを利用して、ご自身に合った治療法を検討してみてください。
この記事の監修
SSクリニック 柴田真一 院長
プロフィール
- 経歴
- 平成6年 岡山大学医学部卒業
社会保険中京病院(臼田俊和 部長)
虎の門病院(大原國章 部長)に勤務 - 平成12年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 助手
- 平成16年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 講師
- 平成20年 皮ふ科SSクリニック(現在 SSクリニック)開院
- 所属学会・資格
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚外科学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚外科学会評議員
- 日本アンチエイジング外科美容再生研究会 認定医