美容医療コラム
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目の周囲にできる小さなブツブツ「汗管腫(かんかんしゅ)」は薬で治せる?
目の周囲にできる小さなブツブツ「汗管腫(かんかんしゅ)」は薬で治せる?

汗管腫

2020.05.04

どのような病気でも、できれば痛い思いをせずに治したいもの。ましてや未知の治療には何かとマイナスイメージつきまとい、なんとなく怖いと感じてしまうのは仕方がないことです。
現代の医療では、なるべく身体に傷をつけない「低侵襲治療」がトレンドです。例えば内臓にできた腫瘍を取り除く場合、以前は身体の表面を大きく切開していた外科手術が、近年では内視鏡を使用してごくわずかな傷や負担で完了するケースが増えました。病気が手術ではなく、塗り薬や飲み薬で治るのならばとても心理的な負担は少ないでしょう。美容医療においても、レーザー治療や注射治療など、負担の少ない治療法が流行する傾向にあります。
それでは汗管腫は、薬で治療することができるのでしょうか? 詳しく解説していきます。

  1. 汗管腫とは?
  2. 汗管腫は薬で治せる?
  3. 汗管腫の有効な治療とは
  4. 治療後に処方される薬について
  5. ドクターコメント

汗管腫とは?

汗管腫とは、思春期の女性に好発し、中年以降に目立ってくる1~3ミリの良性のできもののことです。
腕や身体などにも発生しますが、特にまぶたとその周囲に目立って多く見られます。皮膚の表面が扁平に盛り上がり、痛みや赤み、かゆみなどはありません。最初は小さな点で現れますが、放置すると点が融合して面になり、目立つことがあります。ブツブツは立体的に盛り上がっているため、お化粧では隠すことができません。

汗管腫が発生する原因はまだ解明されていませんが、遺伝的な疾患である可能性が指摘されています。治療後に再発することも多く、ある程度取り除いて、継続的に治療を行うことがあります。
また汗管腫は健康被害がないため、見た目の改善を目的とする治療には公的医療保険は適用されません。

汗管腫は薬で治せる?

結論から述べますと、汗管腫は薬用クリームや飲み薬、その他の薬では治療することはできません。
なぜなら汗管腫は、肌の真皮層にあるエクリン汗腺から発生する良性腫瘍が原因であるからです。この皮膚内部の腫瘍を何らかの方法で取り除かない限り、盛り上がったブツブツは解消されません。

なかにはイボやニキビと勘違いされて、漢方薬やヨクイニンの薬などを購入して使用するケースが見られますが、全く効果はありません。
また、十分な予防法も確立されていないため、例えばニキビの発生を抑える塗り薬のように、腫瘍の増殖を抑える薬もないのが現状です。

汗管腫の有効な治療とは

それでは汗管腫に有効な治療法には、どのようなものがあるのでしょうか。
現在、医療機関で行われている施術方法はいくつかありますが、いずれも皮膚内部の腫瘍を取り除く、医療機器を用いた施術になります。その代表的な治療法をご紹介します。

炭酸ガスレーザー治療

汗管腫をはじめ、ほくろやイボなどの隆起性した肌の治療に適している「炭酸ガス(CO2)レーザー」を使用します。
10600nmの赤外線の光で、治療部位だけを瞬間的に蒸散させて汗管腫のみを削ります。
出血が少ないのが長所です。

エルビウムYAGレーザー治療

さまざまなレーザーの中でも、水分蒸発率が高い「エルビウムYAGレーザー」を使用します。
こちらも治療部位だけを瞬間的に蒸散させますが、水への吸収が高いため少ない浸潤で汗管腫を削ることが可能です。
傷の回復も早く、カサブタができないため、傷跡が残りにくいといった特長があります。

レーザー治療後は皮膚が凹むため、跡が残らないようにテープを貼って、1週間〜10日ほど閉鎖療法を行う必要があります。
2種類のレーザー治療の治療効果はほぼ同じですが、エルビウムYAGレーザーはカサブタができないため、術後の赤みやダウンタイムがやや少ないと言えます。

針電気凝固法

髪の毛よりも細い針の先端だけに高周波が流れるマシンを使用します。
汗管腫ひとつひとつに針を差し込んで、高周波で腫瘍を直接破壊します。侵襲が少ないため、術後の閉鎖療法は必要ありません。
汗管腫が縮小して改善するまで、3~6ヵ月と時間がかかります。

治療後に処方される薬について

汗管腫を治療した後に使用される薬について触れてみます。

炭酸ガスレーザー治療とエルビウムYAGレーザー治療の直後は、皮膚が凹んでいる状態になります。術後に何もしないでいると、皮膚の陥没が跡になって残ってしまうため、ケアが必要となります。
当クリニックでは、レーザー治療後に保護テープで「閉鎖療法」を行っています。閉鎖療法とは、傷を密封して保護しながら傷ついた部位の肉芽形成を促進し、傷の治りを早める療法のことです。きちんとした閉鎖療法を行うと、傷をきれいに治すことができます。
具体的には、治療した部位にハイドロコロイド製剤と呼ばれる保護テープを貼ります。ハイドロコロイド製剤とは、滲出液を吸収してゲル化することにより、創傷部を乾燥させず、肉芽形成(上皮再生)を促進します。さらに外部からの感染を防止し、疼痛を緩和する、すぐれた効果を発揮する創傷被覆材です。家庭用のものでは、一般的に「キズパワーパッド™」として知られています。
ハイドロコロイド製剤は、厳密には薬ではありませんが、傷の回復を促進する役割を果たすものになります。

一方、針電気凝固法は術後の保護テープは必要ありません。そのため治療の翌日から仕事などで人前に出られる方にはメリットを感じやすいでしょう。ただし術後は少し腫れるため、腫れ予防の薬を処方する場合があります。

 

ドクターコメント

Doctor comment
ドクターコメント

汗管腫は皮膚内部の良性の腫瘍であるため、真皮まで届く治療が必要になります。残念ながら薬で小さくしたり予防したりということができません。
現在は医療機器を用いた施術が行われていますが、ほとんどの場合はキレイに治ります。ただし、汗管腫は他の良性腫瘍である稗粒腫(はいりゅうしゅ)や加齢でできるイボと間違われやすいため、正確に診断するためには皮膚の一部を採取して検査する、いわゆる「生検」を行う場合があります。
そのため、汗管腫の治療は経験を積んだ医師にご相談いただくのが良いかと思います。

この記事の監修

SSクリニック 柴田真一 院長

プロフィール
経歴
平成6年 岡山大学医学部卒業
社会保険中京病院(臼田俊和 部長)
虎の門病院(大原國章 部長)に勤務
平成12年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 助手
平成16年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 講師
平成20年 皮ふ科SSクリニック(現在 SSクリニック)開院
所属学会・資格
日本皮膚科学会
日本美容皮膚科学会
日本皮膚外科学会
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
日本皮膚外科学会評議員
日本アンチエイジング外科美容再生研究会 認定医
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