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- 自分の血液でシワを治療する
多血小板血漿(PRP)美容法の基本情報
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PRP
2019.09.30
老け顔の原因として、常にトップにランキングされる顔の「シワ」。
肌質にもよりますが、30代を迎えたあたりから現れはじめ、だんだん深くクッキリと残るようになります。特にほうれい線などは、通常のスキンケアで消すことは難しく、治療のために美容外科を検討される方も多いようです。
現代の美容医療には、異なるアプローチのさまざまなシワ治療があります。なかでも、自分自身の血液から採った「PRP」を使った治療は、自然な若返りを期待できる治療として人気です。この「PRP」がどういったものなのか、またどのような効果が期待できるのか、基本的な情報をお伝えします。
美容クリニックのシワ治療
美容外科や美容皮膚科には、色々な手法によるシワ治療があります。
美容外科領域では、主に外科的な手術でたるみやシワの解消を目指します。顔に複数の医療用糸を入れて引き上げる「スレッドリフト」や、皮膚の一部を切除し顔の皮膚を引っ張り上げて縫い縮める「フェイスリフト」などがあります。
美容皮膚科領域では、肌の奥に熱を届けてタイトニングを図る「レーザー治療」や、ヒアルロン酸などをシワに注入する「注入治療」などがあります。PRPを用いた治療は、この注入治療の一種になります。
ヒアルロン酸とPRP
注入治療のなかで、一般的によく知られているものは「ヒアルロン酸注入」と言えるでしょう。これは、粘調性のあるヒアルロン酸注入材をシワに沿って注射することで、シワを目立ちにくくする治療です。「物理的にシワを埋める」ため、注入後すぐにシワが目立たなくなります。その後は注入材が体内にだんだんと吸収されて、半年〜数年かけてもとの状態に戻ります。
一方、PRPはご自身の血液成分から放出される成長因子によって、衰えた肌の機能を回復させることを目的とした治療です。ヒアルロン酸と同じようにシワに注入しますが、PRPが肌内部で成長因子を放出し、肌の細胞に働きかけて肌の内部でヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチンなどを生成させ、シワを薄くすることを目指します。ほうれい線のような深いシワから、ちりめんジワまで治療が可能です。
一見同じように見える注入治療ですが、本来人間に備わった自己治癒システムを最大限に利用する再生医療のひとつであるため、全く別のアプローチであると言えるでしょう。
PRPについて
それではPRPについて、もう少し詳しくご説明します。
多血小板血漿(PRP)とは
私たちの血液は、赤血球、白血球、血小板の有形成分と、血漿(けっしょう)と呼ばれる液体部分から成り立っています。多血小板血漿(PRP=Platelet-Rich Plasma)とは、血液を遠心分離によって調整し、血小板の濃度を高めた濃縮物になります。
活性化したPRPを注入することよって、細胞増殖作用・血管新生と修復作用・コラーゲン産生作用のあるPDGF(血小板由来増殖因子)、上皮細胞の成長促進や創傷治癒作用のあるEGF(上皮増殖因子)、コラーゲンやヒアルロン酸を産生するFGF(線維芽細胞増殖因子)、血管内皮細胞の増殖や新生作用のあるVEGF(血管内皮増殖因子)など、さまざまな成長因子が放出されコラーゲン、ヒアルロン酸を産生、組織を修復することにより、加齢によって衰えた組織を直そうとする自然治癒力が働きます。
エイジングケアでは顔のシワ、目の下のクマ、首や手のシワが適応になるほか、スポーツによる外傷や障害(靭帯損傷や肉離れなど)の治療、変形性ひざ関節症の治療、歯科治療、薄毛の治療など幅広く利用されています。
PRP治療の方法
まず患者さまから、約18ccの採血を行います。採取した血液を、遠心分離機を用いて回転させます。試験管の中で、「血小板の少ない血漿」「多血小板血漿(PRP)」「赤血球」に分離した液体からPRPを取り出し、活性化させたのちに、シワの気になる部分に注入するというのが通常の方法です。
PRP治療は再生医療
PRPを抽出生成するために血液を加工することは、再生医療の「特定細胞加工物」にあたります。PRP治療を提供する全ての医療機関は、2014年に施行された再生医療等安全性確保法に基づいて届出を提出し、国からの認可※が必要です。
※当クリニックでも、再生医療第3種の提供計画書が受理されています(Platelet Rich Plasma(多血小板血漿;PRP)を用いた美容治療 再生医療第3種 計画番号:PC4150021)
年齢を選ばないエイジングケア
PRP治療は、シワが気になりだした30代の方から70、80代の方まで幅広く受けていただけるエイジングケアです。メスを使わずに、採血から注入まで短時間で行うことができるため、どの患者さまにとってもダメージが少なく負担が軽い治療になります。
PRP治療のマイナス面
マイナス面としては、自己の細胞を活性化するため、個々の血小板の能力に左右されて、結果にバラツキが出るという点です。例えば高齢の方のPRPは、若い方に比べて少し効果の発現が弱いといった傾向にあります。その場合は、期間を空けて再注入を行うなどの治療が行われます。
また、注入の際に内出血や赤み、腫れなどが発生します。赤みや腫れは、通常の場合翌日には収まり、内出血は一週間ほどで改善します。注入後には皮膚にごわつき感がでますが、こちらも3日程度で収まります。
PRP治療の歴史
従来PRPは、主に顎口腔領域である下顎骨再建、インプラント埋入時などで使用され、骨再生分野において研究や臨床応用がなされてきました。(1998年、Robert Marxが顎骨再建治療での骨再生の増大目的でPRPを使用)
近年、美容医療の分野でも先進的再生医療が応用されています。
当クリニックで行なっているのは「W-PRP療法」と呼ばれるものです。これは、PRPの濃縮率を従来の3~5倍に高めて、効果の向上を狙った治療です。以前のPRPには含まれなかった白血球が含まれており、「PRP」と「白血球」との相互作用によって、自然治癒力と組織再構築力の増強が図られました。
W-PRPの特徴
当クリニックでは、10年前からW-PRPによる治療を行っています。W-PRPの特徴をご説明します。
当クリニックのW-PRP
W-PRPとは高濃度の血小板に白血球を残したものになります。さらに当クリニックでは、赤血球もごくわずかに残します。赤血球には軽度の組織破壊能力があり、シワ部分の構築を一度破壊することで、肌の再生進行を図りやすくします。この効果を最適に発現させるために、適切な分離を行います。
仕上がりについて
効果は、治療1ヵ月後くらいより効果を実感できます。少しずつ効果が現れるため、周囲の人に気づかれにくいといった特徴があります。シワが浅くなってゆくのと同時に、弾力性とハリの回復も期待できます。肌も自然な柔らかさを保ちます。
幅広い適応
美容医療の分野では、顔の深いシワや細かなシワの治療が中心ですが、老化によってできた凹みや、目の下のクマの治療にも適しています。その他に首にできたシワや手の甲などのシワなども治療が可能です。
さらに成長因子を多く含むことから、頭皮に注入することによって薄毛の改善を目指す毛髪治療にも使用されています。
効果の持続
個人差はありますが、ほうれい線では3年程度効果が持続されます。その後は全く元通りになるわけではなく、ある程度の効果は残ります。
- Doctor comment
- ドクターコメント
PRP治療は、従来のヒアルロン酸注入などの若返り治療を受けて、満足に結果がでなかったという方に適応しています。ヒアルロン酸が不得意とする細かなちりめんジワや、肌質そのものの修復も望めます。
ハリの回復も期待できるため、シワに化粧が詰まって気になるといった方は、自分の肌の状態を専門医に相談されてみてはいかがでしょうか。
この記事の監修
SSクリニック 柴田真一 院長
プロフィール
- 経歴
- 平成6年 岡山大学医学部卒業
社会保険中京病院(臼田俊和 部長)
虎の門病院(大原國章 部長)に勤務 - 平成12年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 助手
- 平成16年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 講師
- 平成20年 皮ふ科SSクリニック(現在 SSクリニック)開院
- 所属学会・資格
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚外科学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚外科学会評議員
- 日本アンチエイジング外科美容再生研究会 認定医