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- 目の周りのブツブツの正体は?
汗管腫(かんかんしゅ)という病気を解説します
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汗管腫
2019.09.30
30代に入ると、いつのまにか目の下などの周囲に肌色のブツブツが目立って気になってきた、といった経験はありませんか?
思春期の女性に好発し、中年以降に目立ってくる1~3ミリのブツブツは、医学的には「汗管腫」と呼ばれるもののことがあります。最初は小さな点で現れて、症状が進むにつれて点が融合し、面となって目立つ場合があります。そのまま放置しても問題ありませんが、自然に治ることはないため、見た目を気にして治療をしたいと皮膚科にかかる方もいらっしゃいます。
今回は、特にお悩みの多い目の周りの汗管腫について解説します。
汗管腫とは
肌の内部には、汗腺と呼ばれる汗を分泌する2つの汗腺があります。そのうちのエクリン汗腺と呼ばれる汗腺は、全身に分布して、透明でニオイがない汗を分泌します。汗管腫は、このエクリン汗腺の管が何らかの理由で限局的に増殖して、皮膚の表面が扁平に盛り上がる良性の腫瘍です。
主に、上下まぶたとその周囲に好発する皮膚の盛り上がりで、おでこや腹部、胸部、腋窩、外陰部に広がる場合もありますが、いずれも目の周りほど目立ちません。肌色〜やや褐色がかった色味で、痛みや赤み、かゆみなどはなく、触った感じも硬さはありません。男性より女性に多く見られます。
汗管腫は、肌の内部で発生した腫瘍であるため、化粧品などのスキンケアで解消されることはありません。
腫瘍といっても悪性腫瘍(がん)のように転移して、重い健康被害をもたらすこともありません。そのため皮膚科を受診しても、治療を行われずに放置するしかないと言われるケースもあるようです。
しかし、目の周りに症状が現れるため、美容的な観点から治療を望まれる方も多くいらっしゃいます。
汗管腫の原因
汗管腫が何故できるのかは完全に解明されてはいません。しかし、優性遺伝で遺伝的な疾患である可能性が指摘されています。
汗管腫を治療によって取り除いても、取り除いた部位や、それまでまったく発生していなかった部位に再発する傾向があります。たったひとつの汗管腫でも、腫瘍細胞が多く増殖しています。
そのため、イボやホクロの切除のように、一度取り除けばほぼ再発しないという治療法はありません。完治を目標とするのではなく、ある程度取り除いて、見た目をコントロールするという治療になります。
間違われやすい他の病気
汗管腫は、基本的に見た目を観察して診断を下しますが、なかには形状が似ていて、間違われやすい病気もあります。
ここでは、汗管腫に間違われやすい他の症状を説明します。
エクリン汗嚢腫(のうしゅ)
エクリン汗嚢腫は、汗管腫とよく似た良性腫瘍です。エクリン汗腺の真皮内汗管が拡張して、囊腫化(袋状になる)したものです。特にまぶたの周りに多く現れますが、顔全体に出ることもあります。米粒大の大きさで、半透明〜肌色をしています。
こちらは汗をかく季節に悪化して現れ、寒いときには目立たないという特徴があります。女性に多く発症し、汗の分泌量が増加する思春期に目立ちはじめますが、発症の原因はわかっていません。
稗粒腫(はいりゅうしゅ)
稗粒腫は、真皮層にできる、角質が詰まった白い袋状の良性腫瘍です。1〜2ミリの白くて固い光沢があるブツブツです。こちらも目の周辺にできやすく、額や鼻にも発症します。
女性にできやすく、生まれつき、あるいはヤケドや怪我で傷つけられた皮膚の治癒後にできることがあります。
老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)
皮膚の老化に伴い増えてくるイボの一種です。全身どこにでもできますが、日光が当たる頭や顔、首に多く見られます。30代ころから発症しはじめ、加齢とともに増えていきます。
色は肌色〜黒っぽい茶色のものまであり、皮膚の盛り上がりも見られます。炎症を起こして、かゆみを生じることがあります。美容的観点から治療を希望される方も多くいらっしゃいます。
見た目を観察することで区別が付きにくい場合は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で観察する、生検(病理検査)を行う場合もあります。
汗管腫の治療法
汗管腫は良性の腫瘍であり、放置していても健康には影響がないため、美容目的で治療されることが多いです。そのため治療するときには自費診療となります。
治療を行う場合は、以下のような3種類の方法が検討されます。それぞれの治療の内容と、メリット・デメリットを説明します。
炭酸ガスレーザー
波長10600nmの遠赤外線で、熱エネルギーにより汗管腫を削ります。
メリット:
出血が少なく創傷治癒が早いのが特徴です。
デメリット:
熱エネルギーが蓄積してしまい、治療後に瘢痕を生じることがあります。また、レーザー熱によって治療後は皮膚が凹むため、跡が残らないように、1週間ほど照射部位にテープを貼って閉鎖療法を行う必要があります。
エルビウムヤグレーザー
当クリニックでは、水分吸収率の高いエルビウムヤグレーザーを使用し、汗管腫を削ります。カサブタができないため、瘢痕を生じにくいのが特徴です。
メリット:
照射したところが蓄熱せずに組織が蒸散するため、照射部位どうしが干渉せず、丘疹が密に増生する汗管腫の治療に適しています。
デメリット:
こちらも治療後は皮膚が凹むため、跡が残らないように、1週間ほど照射部位にテープを貼って閉鎖療法を行う必要があります。
針電気凝固法
炭酸ガスレーザーもエルビウムヤグレーザーも、汗管腫を削るというアプローチですが、針電気凝固法は、先端のみに高周波が流れる髪の毛ほどの細い針を、エクリン汗腺に差し込んで、高周波で破壊するという治療です。
メリット:
皮膚の内側にある、汗管腫の病変のみを治療することができるため、侵襲が少なく術後の閉鎖療法も必要ありません。
デメリット:
汗腺のひとつひとつに針を刺すため、回数と時間がかかります。
このほかに、例外的にメスによる切除(手術)がありますが、これは目の周りのたるみ取りの手術と同時に行うケースや、顔以外の汗管腫に対して行われるケースに検討されます。
いずれも治療後に再発リスクがあるため、目立たないようにある程度取り除き、再発後にまた治療を行います。
- Doctor comment
- ドクターコメント
汗管腫は健康被害がないため、治療しなくてもよいと医者に言われて、そのまま放置して大きくなってしまい、当クリニックを訪れる方が多くいらっしゃいます。汗管腫が大きくなると、治療に負担がかかったり、跡が残るリスクもありますので、放っておかずに早めに治療を行ったほうが良いでしょう。小さいうちに治療すると治りも早くなると思います。
また、他の皮膚疾患と見分けが付きにくいため、誤った治療法を受けたケースも見受けられます。当クリニックでは、このような場合は生検(病理検査)を行い、正確な診断を目指します。迷われている方は、ぜひ一度カウンセリングにお越しください。
この記事の監修
SSクリニック 柴田真一 院長
プロフィール
- 経歴
- 平成6年 岡山大学医学部卒業
社会保険中京病院(臼田俊和 部長)
虎の門病院(大原國章 部長)に勤務 - 平成12年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 助手
- 平成16年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科 講師
- 平成20年 皮ふ科SSクリニック(現在 SSクリニック)開院
- 所属学会・資格
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚外科学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚外科学会評議員
- 日本アンチエイジング外科美容再生研究会 認定医